国立病院機構相模原病院
臨床研究センター 病態総合研究部
佐藤さくら
アナフィラキシーは、症状が出てから短時間のうちに全身に広がるアレルギー症状です。血圧の低下や意識障害などを伴うアナフィラキシーショックを起こすこともあり、生命に危機を与え得るものです。日本でも毎年数十名の方が亡くなっています。原因は様々なものがありますが、食物、医薬品、昆虫刺傷などが多いことが知られています。
エピペン®はアナフィラキシーの症状が出た時に使用し、症状が悪くなるのを抑えるための補助治療剤です。アナフィラキシーの治療薬であるアドレナリンが入っており、アドレナリンを速やかに注射できるように設計された注射針一体型自己注射用製剤です。エピペン®には0.15 mgと0.3 mgの製剤があり、2011年9月から保険適用となっています。日本では0.15 mg製剤が体重15 kg以上、0.3 mg製剤が体重30 kg以上に処方可能です。体重15 kg未満の児への適応はありませんが、0.15 mg製剤はアメリカでは体重10-25 kg、ヨーロッパでは体重7.5-25 kgの患者への処方が推奨されています。体格が小さいお子さんの場合には、エピペン®を使用した際のリスクと処方によるメリットについて主治医の先生とよく相談し、処方してもらうか判断すると良いでしょう。一般的には、アナフィラキシーの既往がある場合や、アナフィラキシーを起こす危険性が高い場合に処方されますが、保育所・学校など集団生活の開始時、旅行などで医療機関へのアクセスが良くない場合なども、処方の必要性を主治医と相談すると良いでしょう。
アナフィラキシーに対するエピペンの有効性は82%、有害事象(何らかの症状が出ること)は3.7%と報告されています。有害事象としては、アドレナリン自体の作用による血圧上昇、心悸亢進、不整脈の出現、悪心・嘔吐、頭痛、振戦などがあり、針による切創、出血、疼痛などもあります。
アナフィラキシーを疑う場合には、できるだけ早くエピペン®を使用することが大切です。アナフィラキシーショックにより亡くなった方の検討では、アレルギー症状が出てから30分以内にアドレナリンの投与を行うことが致死的な転帰をとるかどうかのポイントになると報告されています。アナフィラキシーショックは急激に症状が進む場合もあり、少なくともショックになってからエピペン®を使用したのでは遅すぎると言われています。具体的にエピペン®を使用すべき症状を表に示します。表の中の症状がひとつでもあれば、速やかにエピペン®を使用しましょう。
日本小児アレルギー学会:
一般向けエピペン®の適応, 2013
エピペンは以下のような方法で使用します。
普段から付属のエピペントレーナーを利用して、使い方を練習しておくことをお勧めします。
ERCAパンフレット「ぜんそく予防のために食物アレルギーを正しく知ろう」の12ページでは、エピペンの使い方を写真付きでご紹介しています。こちらもご参考にしてみてください。
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日光の当たる高温下に放置せず、夏場に携帯する際は、保冷バックや保冷剤の使用することもあります。15~30℃で保存するようにしてください。飛行機内に持ち込む際には、予約時に機内に持ち込むことを連絡しておくと良いでしょう。
アナフィラキシーは自宅だけでなく、保育所・園・学校などでも起こります。保育所および学校のガイドラインでは、教職員によるエピペンの使用が認められていますので、エピペンを処方されている場合には、主治医に生活管理指導表などを記入してもらい、アレルギー症状が出た時の対応について、あらかじめ教職員と相談しておくと良いでしょう。
実際にアナフィラキシー症状が出た時には、慌ててしまいエピペンの使い方を忘れてしまったり、使うタイミングがわからなかったりすることがあります。「マイエピ」はエピペン®を使用するすべての方のためのアプリで、アナフィラキシー症状が出た時に、動画と音声でエピペンの使用方法をナビゲーションします。また症状や検査、食事などをメモや写真で記録できるノート機能もあり、定期受診時に自宅での経過を主治医に説明する際にも活用できます。
マイエピ(別ウィンドウで開きます)