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熱中症に気をつけましょう!③(全3回) ~初期症状と緊急時の対応~

本格的な暑さがやってきました。最終回となる今回は、熱中症の自覚症状や熱中症かもしれないと感じたときなど緊急時の対応について、大阪府結核予防会大阪複十字病院副院長の松本智成先生にうかがいました。

ポイント!

区別が難しい新型コロナウイルス感染症と熱中症の初期症状 だから大切な熱中症予防

松本智成 先生 大阪府結核予防会大阪複十字病院副院長
松本智成 先生

飲み物を持ち歩き 1日1.2リットルの水分補給

まず、何よりも大切なのは熱中症にならないよう暑さから身を守ることです。涼しい服装だけでなく、日傘や帽子を活用しましょう。こまめな水分補給とともに、汗をかいたら塩分も補給しましょう。のどが渇いていなくても、1時間ごとにコップ一杯の水を飲んだり、入浴前後や起床後には水分補給を心がけましょう。1日当たり1.2リットルの水分補給が目安とされています。外出時には飲み物を持ち歩くのもよいでしょう。暑さ指数の有効活用も忘れないでください。

気づきにくい熱中症の初期症状

熱中症かもしれないと自分で感じたり、まわりの人に熱中症の症状がみられたら、落ちついて対処してください。最初の応急処置が肝心です。

熱中症を疑う症状は、めまい、立ちくらみ、顔のほてり、不快感、倦怠感、虚脱感、吐き気、頭痛、筋肉痛、けいれん、大量の発汗、高体温、意識障害などさまざまです。初期症状は、いつもと感覚が違ったり、ぼーっとしたり、感覚が鈍るなど、気づきにくいこともあります。これらの自覚症状から、だんだん重症化していきますが、高齢者の場合、一気に進行することがあるため注意が必要です。

呼びかけに応えなければ救急車を

症状に自分で気づいた場合、冷たい水分をとりましょう。水分摂取だけでなく、体の深部体温を下げることにつながり有効です。涼しい場所に移動し、涼しい服装になり体を冷やします。

家族や周囲の人の異変に気づいた場合、まず呼びかけに応えるかどうかを確認します。応えない場合は救急車を呼んでください。無理に水を飲ませようとはせず、涼しい場所に移し、服をゆるめ、体を冷やしてください。保冷剤などをタオルにまいて太ももの付け根、脇の下、首を冷やします。

呼びかけに応えることができれば、涼しい場所に移し、服をゆるめ、体を冷やし、水分を摂取させましょう。水分を自分で飲めなかったり、意識が混濁してきたら、救急車を呼んだり、医療機関に連れて行きましょう。

医療機関への搬送 状況をよく知る人が付き添いを

医療機関での治療は、全身の冷却と脱水に対する水分補給としての点滴などが行われます。冷却マットなどを使った体の表面からの冷却だけでなく、胃や膀胱に管を挿入し冷たい生理食塩水を出し入れして、体の内部から冷却する方法もとられます。

検査と治療を迅速に始めるために、搬送された方の情報は大切です。様子がおかしくなったときに、どこで何をしていたか、最初の症状はどのようだったかなどについて、その場に居合わせた最も状況のよくわかる人が医療機関まで付き添ってください。そうすることにより熱中症の診断をより迅速に行うことができます。

自分自身と医療体制を守るため 熱中症予防が重要

今年の夏は新型コロナウイルス感染症が収まりそうにありません。困ったことに、新型コロナウイルス感染症を疑う受診の目安になる、息苦しさや強いだるさ、高熱という症状は、熱中症の初期症状でもみられることがあるのです。救急医療の現場では両者の判別が、即座には難しいケースが想定されています。

自分自身の体調観察記録をつけておけば、体調がよくない場合に、それを医師に示すことで、熱中症か新型コロナウイルス感染症かの判断の助けとなるかもしれません。一方、新型コロナウイルス感染症の流行が拡大すれば医療状況がひっ迫し、熱中症に限らず、ぜん息の発作やCOPDの増悪、その他の病気も含めて、救急受診が難しくなる恐れがあります。

新型コロナウイルス感染症が流行している今だからこそ、熱中症の予防が重要になり、ぜん息の発作やCOPDの増悪は避けなければなりません。そのためにも、きちんとした治療と服薬の継続が大切になるのです。

環境省熱中症予防サイト(別ウィンドウで開きます)

松本智成(まつもと・ともしげ)先生

1993年大阪大医学部医学科卒業。大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター臨床研究部長兼感染症センター長などを経て、2015年から大阪府結核予防会大阪病院診療部長。16年から副院長。日本救急医学会、日本呼吸器学会などのワーキンググループが昨年6月に公表した「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」のメンバーの一人。(大阪府結核予防会大阪病院は7月1日から大阪府結核予防会大阪複十字病院に名前がかわりました)