新型コロナワクチンの接種 ~アレルギーを持つ人や子どもはどうすればいい~

新型コロナウイルス感染症の流行が収まりません。東京都、大阪府をはじめ全国21都道府県に、緊急事態宣言が発出されています。予防の切り札といえる新型コロナワクチンについて、国立感染症研究所感染症疫学センター予防接種総括研究官の多屋馨子先生にうかがいました。

ポイント!

アレルギーがあっても受けられる 接種後の健康観察は30分

多屋馨子(たや・けいこ) 先生 国立感染症研究所感染症疫学センター
予防接種総括研究官
多屋馨子 先生

2回の接種で 予防効果は90%以上

今、日本で認められているワクチンは主にこれまで医療従事者や高齢者等に使われてきたファイザー社製、主に大規模接種センターや職域接種で使われてきた武田/モデルナ社製、2021年8月2日から接種可能となったアストラゼネカ社製の3種類があります。ファイザー社製と武田/モデルナ社製は、ウイルスのたんぱく質をつくる元になる情報(メッセンジャーRNA)の一部を注射します。この情報をもとに人の体の中でウイルスのたんぱく質の一部ができ、これに対してウイルスを攻撃する抗体や細胞性免疫がつくられます。病原体であるウイルスそのものを弱度化して接種し、免疫をつくる生ワクチンとは異なる仕組みです。

免疫ができると、感染しにくくなり、感染しても症状が軽くてすむようになることが期待されています。効果を高めるため、一定の期間をあけて同じ種類のワクチンを2回接種します。

ワクチン接種が進んでいる海外のデータでは、ファイザー社製、武田/モデルナ社製ともに2回目接種後2週間以降の発症予防効果は90%以上とされています。これはワクチンを2回接種すると、90%の人が発症しないという意味ではありません。ワクチン接種後に発症した人数と、ワクチンの代わりにプラセボ(生理食塩水)を接種して発症した人数を比べて計算されたものです。

また、イギリスやイスラエルではワクチン接種により感染者が減ったという報告もあります。デルタ株などの変異株に対しての有効性の詳細は現在、確認中です。一般的にウイルスはつねに変異を起こしており、少しの変異で効果がなくなるというわけではありません。ワクチンの種類にもよりますが、有効性は下がるものの、一定の効果を示す可能性があると考えられています。

副反応は発熱や頭痛、接種した腕の痛み 頻度低いがアナフィラキシーも

一方、ワクチンを接種すると免疫ができる以外の反応が起こることがあり、副反応と呼ばれます。新型コロナワクチンでは、ワクチンの種類によって若干の違いはありますが、接種した部位の痛みが80%以上、倦怠感や頭痛は60~80%程度、発熱は40~80%程度で起こるとされています。

このほかにも吐き気、筋肉痛、関節痛、接種部位のかゆみなどがあります。特に2回目の接種では、当日夜から翌日に症状の出る方が多いようなので、接種翌日は休みをあらかじめとる方がよいでしょう。また、解熱剤を準備するなどの対策をしておくことも大切です。解熱剤を使っても免疫の獲得に対する悪影響はなく、ふだん飲んでいるものを用意しておくのがお勧めです。

接種直後にはアナフィラキシーが起こることがあります。急性のアレルギー反応で、多くは接種後30分以内に起こります。全身に発疹が出たり、呼吸困難や血圧低下などを起こします。発症した場合、接種会場で治療を行います。頻度は100万回接種当たりファイザー社製で5件、武田/モデルナ社製で2.2件とされています。また、頻度は低いものの、若年男性を中心に接種後4~28日頃に心筋炎・心膜炎を起こしたという報告がありますが、多くは軽症で入院治療により回復しています。また、血小板減少を伴う血栓症や血栓塞栓症が報告されています。厚生労働省は頻回に会議を開いて検討していますが、現時点ではワクチン接種に影響を与える重大な懸念は認められないとしています。

予診票の記入と医師の質問には正しく回答

アトピーや花粉症の人、食物アレルギーがある人、これまでに薬や注射でアレルギーを起こした人は、アナフィラキシーを起こす可能性があるとされています。そのため、予診票には必ずアレルギーをチェックする項目があり、予診を担当する医師も着目しています。何らかのアレルギーを持つ方は、予診票に必ず記入し、医師の質問にも正しく答えましょう。

予診票を見た医師の判断により、接種後の健康観察は15分と30分に分かれます。アレルギーの既往や注射で気分が悪くなったことなどがある人は30分の待機時間となりますが、ワクチンを接種すること自体に心配はありません。ただ、1回目の接種でアナフィラキシーをおこした方は、同じ種類のワクチンの2回目接種を受けることはできません。

12歳以上の子どもへのワクチン 個別接種が望ましい

現在、公費でワクチンを受けられるのは満12歳以上で、ファイザー社製と武田/モデルナ社製ワクチンの2種類となります。12歳未満の子どもはワクチンを接種できません。現時点では、両社のワクチンの対象者が12歳以上に限られているからです。生後6カ月から11歳を対象とした、ワクチンの安全性と効果を確認する臨床試験は現在、海外で実施されており、まだ終わっていません。

子どもは新型コロナウイルス感染症になっても、あまり重症化しないという海外や国内の報告があります。限られたワクチンを有効に利用するため、患者に接する医療従事者、重症化しやすい高齢者や持病のある人、高齢者施設で働く人などと、国内ではワクチン接種に優先順位がつけられました。だからといって子どもにワクチンを接種する必要がないわけではなく、今年6月に12歳以上に対象を広げました。

重篤な基礎疾患のある子どもは、ワクチン接種により新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐことが期待されます。もちろん、健康な子どもへの接種も意義がありますが、海外での子どもへの接種では、発熱や接種部位の痛みなどの副反応出現頻度が大人と同様に高いと報告されています。接種については、本人と保護者が、接種のメリットとデメリットを十分に理解していることが前提です。接種前後にはきめ細かな対応が必要なため、集団接種よりも個別接種が望ましいでしょう。

子どもを守る手段は 周囲の大人のワクチン接種

現状では12歳未満の子どもはワクチンを接種することができません。ワクチンを接種していない子どもを感染から守るには、周囲の大人がワクチン接種により免疫を獲得することがとても大切です。感染経路を調べた文部科学省の調査(令和2年6月1日~令和3年4月15日)によると、小学校の児童の78%が「家庭内感染」ですが、高校の生徒になると「家庭内感染」34%、「感染経路不明」33%、「学校内感染」24%となり、大人の感染経路のパターンに近づいています。子どもの発症リスクを下げるには、まず家族が感染しないことが最重要となるのです。

接種後も3密を避け マスク着用と手指衛生を

新型コロナウイルス感染症の流行で、国内外の人の移動が激減しました。多くの方が3密を避け、マスクを着用し、手の消毒を徹底した結果、昨冬のインフルエンザは激減しました。新型コロナウイルス感染症と同様に飛沫や接触で感染するヘルパンギーナ、手足口病、ロタウイルス感染症、ノロウイルス感染症、溶連菌感染症も大きく減りました。つまり、新型コロナウイルス感染症予防策は、その他の一部の感染症にも極めて有効だったのです。

ワクチンは発症予防に効果がありますが接種したからといって、必ず感染しないというものではありません。ワクチン接種後も、3密を避け、換気を行い、正しくマスクを着用して、手指衛生を続けてください。また、体調がすぐれないときは、無理して出勤・登校・登園をせずに、職場や学校・幼稚園・保育所などを休むことが大切です。新型コロナウイルス感染症だけでなく、ぜん息やCOPDを悪化させる、その他の感染症を防ぐことにもつながります。

多屋馨子(たや・けいこ)先生

1986年高知医科大学(現高知大学)医学部医学科卒業。大阪大学医学部微生物学講座助教、同大学医学部小児科学講座助教などを経て、2001年から国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官。同センター第三室室長を経て、21年から現職。