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11月17日は「世界COPDデー」
この機会にCOPDを「自分ごと」化しよう!①
~ご存じですか、COPDの現状~

COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)は、肺の機能低下を招くだけでなく、心筋梗塞や脳卒中、がん,糖尿病など全身疾患と併存することが多く、早期発見・早期治療介入が望ましい病気です。最近の研究では、喫煙などの環境により胎児や乳幼児期からすでにCOPDの発症リスクがあることも分かってきました。改めてCOPDの国内外の現状、早期発見の秘けつなど最新の情報を亀田京橋クリニック副院長の金子教宏先生にお聞きし、3回に分けてご紹介します。11月17日は「世界COPDデー」。これを機会に、肺機能検査の受診や、早めの治療で重症化予防に努めましょう。

ポイント!

知らないうちに進行するCOPD!肺だけでなくさまざまな全身の病気とつながります。

金子教宏 先生 亀田京橋クリニック 副院長
亀田総合病院 呼吸器内科顧問 兼務
金子教宏 先生

世界では、COPDは死因第3位の病気

COPDは喫煙が主な原因で肺に炎症が起こり、呼吸がだんだん苦しくなる慢性の病気です。他に化学物質や大気汚染なども発症の原因ですが、90%が長期間の喫煙によるものなので、別名「たばこ病」とも呼ばれています。

厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、日本の成人喫煙率は、1989年の男55.%、女性9.4%から、2019年には男27.1%、女7.6%へと下がっています。最近の学術論文※1では、それでも日本は先進国の中で米国ともに喫煙者数上位10か国に名を連ねており(米4位、日本7位)、まだまだCOPDの危険にさらされていると言ってよいでしょう。

国際保健機関(WHO)の発表によると、2019年に世界でCOPDにより亡くなった人は約323万人で、死亡原因3位です。

日本では、喫煙者数の減少に加え、治療方法が進んだことなどから、減少に転じていますが、それでも2020年にはおよそ1万6000人がこの病気で命を落としています(厚生労働省人口動態統計)。

脳卒中や心筋梗塞、がんなど併存症の危険も!

COPDの初期症状は多くの場合、咳や痰、坂道を上るなど軽い動作で息苦しさを感じる程度です。しかし重症になると、呼吸する力が衰え、自力での呼吸では十分に酸素が取り込めなくなるため在宅酸素療法による酸素吸入が必要となるケースがあります。

ぜひ心にとどめていただきたいことは、COPDを早めに発見して治療を行うことは、さまざまな病気への対策にもつながるということです。

長年の喫煙習慣が原因で発症するCOPDの患者さんは、高齢であることともあいまって心筋梗塞や脳卒中、各種のがん、糖尿病やメタボリック、骨粗鬆症などに加えて、精神的な不安・抑うつ状態を併存する確率が非喫煙者より高くなります。

また、COPDによって息苦しく体を動かすことがつらくなると、横になる時間が増え「サルコペニア」といわれる筋力の著しい低下が起こることや、呼吸の乱れから食欲が低下し「フレイル」と呼ばれる虚弱状態になることも多いようです。このことから、COPDを早めに発見して治療を行うことは、それらへの対策にもつながると考えられるのです。

進歩するCOPDの治療。最大の予防法は「禁煙」です

COPDはかつて治療の難しい病気とされていましたが、近年は治療法の進歩により重症化を遅らせることのできる病気へと変わりつつあり、ガイドラインでも「治療可能な疾患」と書かれています。

COPDの治療には、お薬を使う薬物療法と、それ以外の非薬物療法があります。

薬物療法には、狭くなっている気道を広げて呼吸を楽にするための気管支拡張薬が主に用いられます。ぜん息を合併している患者さんには吸入ステロイド薬を使うことがあります。
医療トピックス:進歩するCOPD治療を知る(別ウィンドウで開きます)

COPD患者さんが感染症にかかると「増悪」といって呼吸困難などの諸症状が一気に悪化することがあるので、これを予防するためにインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンや新型コロナワクチンの接種も大切になってきます。

非薬物療法の代表例としては、運動療法を中心とした「呼吸リハビリテーション」があります。
呼吸リハビリテーション動画(別ウィンドウで開きます)

医療者やご家族のサポートを受けながら、呼吸リハビリテーションに取り組んでみましょう。

最後にCOPDの予防法ですが、これは「禁煙」をおいて他にありません。毎年11月の第三水曜日は「世界COPDデー」です。今年は11月17日がその日にあたります。喫煙者にとって禁煙はとても難しいことかもしれませんが、この機会にぜひトライしてみましょう。禁煙は自分や自分の家族のために必要です。「禁煙は愛。」と言われています。

一定の条件を満たしている場合は、健康保険で禁煙外来を受診することができます。詳しくはお近くの禁煙外来でお尋ねください。
参考:全国禁煙外来・禁煙クリニック一覧(別ウィンドウで開きます)

次回は、COPD早期発見・治療の意義などについてご説明します。

※1 The Lancet, Volume397, Issue10291, P2337-2360, June19, 2021.

金子教宏(かねこ・のりひろ)先生

1988年昭和大学医学部卒業。昭和大学藤が丘病院勤務を経て、97年亀田総合病院呼吸器内科部長代理に就任。98年同呼吸器内科部長。2013年7月亀田京橋クリニック副院長、18年からは同クリニック呼吸器内科顧問も兼務する。日本呼吸器学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医・指導医、産業医などの認定資格を持つ。