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11月17日は「世界COPDデー」
この機会にCOPDを「自分ごと」化しよう!②
~思い当たることはありませんか、COPDの前兆を見逃さない~

今回は、COPDの前駆的な症状などを見極めて、早めに検査、発見するための秘けつをご紹介します。見逃しがちなCOPDの前兆について、亀田京橋クリニック副院長の金子教宏先生に伺いました。

ポイント!

喫煙者を見たらCOPDと思え。 動くと息苦しい、咳や痰がとまらない……もしかしたら COPDかもしれません。
しかし、息切れが出てから発見しても遅いかも!?

金子教宏 先生 亀田京橋クリニック 副院長
亀田総合病院 呼吸器内科顧問 兼務
金子教宏 先生

誰もがCOPDになる危険性があります!

たばこ病とも呼ばれるCOPDから身を守るための最大の防御策は、「禁煙」です。

喫煙者のうち、どの程度の割合でCOPDを発症するかご存じでしょうか。日本呼吸器学会では、喫煙者の15~20%がCOPDになると説明しています。およそ喫煙者の5人に1人、つまり10人のうち2人はCOPDになるわけですが、この数字を多いと感じるか、少ないと感じるかは意見の分かれるところでしょう。

喫煙者の多くは「自分は病気にかからない8人のグループだ。」と考えることでしょう。しかし、COPDを発症する1人になる可能性も決して否定できません。悪くなった呼吸機能は元には戻ることがないので、すでに禁煙を続けている方であっても、喫煙開始が早かった人、喫煙期間が長かった人、喫煙本数が多かった人は要注意です。さらには、一度もたばこを吸ったことがなくても、受動喫煙などによってCOPDを発症することがあることがわかっています。

「咳がよく出るな」……そう感じたら、呼吸器専門医がいる医療機関で検査

COPDは気道がだんだん狭くなって、呼吸がしにくくなる病気です。階段や坂などの上り下りで息苦しさを感じたり、風邪のような症状が長引いて咳や痰がとまらないときは、加齢のせい、ちょっと疲れているだけ、などと自己診断せずに、一度呼吸器専門医のいる医療機関(別ウィンドウで開きます)での肺機能検査の受診を選択肢に入れてください。

検査は、スパイロメトリーという医療機器を使い、息を大きく吸って吐き出す検査があります。この検査で思い切り吸い込んだ空気を一気に吐き出したとき、最初の1秒間に吐き出せる量によってCOPDを診断します。呼吸器専門医は、COPD以外の呼吸器疾患の可能性もきちんと検査して、本当にCOPDであるかどうかを診断します。

早めの診断、治療でCOPDの悪化は遅らせることができる!!

あらゆる疾患は早期発見、早期治療が大切です。たとえばがんでも、進行してから治療するのと、まだ腫瘍が小さいうちに発見して対応するのとでは、完治の可能性が大きく変わってきます。COPDも早めに見つけて適切な治療を行えば、後々在宅酸素療法を導入するような重症度の高い状態にならずに生活できます。

また、COPDが早期に見つかれば、がんや動脈硬化、糖尿病と言った併存症について医師や患者さん本人が関心をもつきっかけとなるので、それらに対しても先手先手で予防できる可能性が高くなります。COPDの早期発見の目安として、たとえば肺の機能で考えると、20歳の時の健常な方の肺機能を100としたとき、年齢とともに、ゆるやかに下降するカーブを描いて衰えていきます。ところが、この衰えのカーブが急速に下がっていく人は、その段階でCOPDの疑いがあると考えられます。これはCOPDの前駆状態、いわばプレCOPDの段階です。

この発見が早ければ早いほど、呼吸リハビリテーションや薬物療法などの早期治療介入で、悪化を遅らせることができるのです。COPDの早期発見には、皆さんが呼吸器専門医を受診することが不可欠です。決して「自分は大丈夫」と思い込まずに、COPDの前兆を感じたら受診することを検討してください。COPDという疾患が頭をよぎれば禁煙の一つの動機付けになります。全ての喫煙者が禁煙できるためにもCOPDという疾患を知り、「禁煙」を考えてみてください。

次回は、胎児期、乳幼児期の環境が、COPDのリスクになることをご紹介します。

金子教宏(かねこ・のりひろ)先生

1988年昭和大学医学部卒業。昭和大学藤が丘病院勤務を経て、97年亀田総合病院呼吸器内科部長代理に就任。98年同呼吸器内科部長。2013年7月亀田京橋クリニック副院長、18年からは同クリニック呼吸器内科顧問も兼務する。日本呼吸器学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医・指導医、産業医などの認定資格を持つ。