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ぜん息、COPD患者さんとインフルエンザ~感染流行に備えて、インフルエンザの基礎知識、ワクチン、新型コロナウイルスとの同時感染リスクについて知っておきましょう~
③ インフルエンザと新型コロナ、同時にかかる可能性は? かかるとどうなる?

引きつづきインフルエンザ(季節性)の流行期が到来しています。ぜん息・COPD患者さんとそのご家族のみなさんに、インフルエンザに対する備え方を紹介する連載コラムの第3回目は、気になるインフルエンザと新型コロナの同時流行、同時感染についてです。ぜん息・COPDをはじめとする呼吸器・アレルギー疾患や感染症にも豊富な知識をもつ昭和大学病院病院長の相良博典先生にお話を伺いました。正しい知識と情報を得て、安全・安心、すこやかな日常を送りましょう。

ポイント!

発熱などの症状があらわれたらすぐ検査!インフルエンザと新型コロナの同時検査ができる医療機関を見つけておきましょう。

相良 博典 先生 昭和大学病院 病院長
相良 博典 先生

インフルエンザと新型コロナの両方のワクチンを接種できます!

すでに新型コロナ感染の第8波が始まっていると言われており、そこに3年ぶりのインフルエンザの流行が重なれば、同時流行という可能性があります。

これらのウイルスに同じタイミングで感染し、発症した場合、症状がより重くなることが推定されます。また、インフルエンザ(あるいは新型コロナ)に罹患して体力が下がり、免疫機能が大きく低下した後に、新型コロナ(あるいはインフルエンザ)に感染するといった連続感染にも注意が必要です。

ぜん息・COPD患者さんは、インフルエンザだけでなく、新型コロナに対する予防策を講じておくことが肝心です。マスクの装着や手指消毒、うがいの励行はもちろんですが、インフルエンザワクチンに加えて、引き続き新型コロナワクチンの接種も検討しましょう。なお、インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの両方を接種することに問題はありません。

発熱時にはインフルエンザと新型コロナの同時検査を!

インフルエンザと新型コロナの初期症状は、発熱、喉の痛み、倦怠感などで、どちらも非常によく似ています。専門医でも、「インフルエンザだと思っていたら検査で新型コロナと分かった」ということが少なくないようです。ですので、発熱などの症状が出たら、すぐに医療機関で検査・診断してもらい治療に進むことが大切です。

現在、インフルエンザと新型コロナに加えて、RSウイルスを同時にPCR検査できるキットもあり、すでに健康保険の適用となっています。どちらに感染しているのか分からない場合も、これにより迅速な鑑別ができるようになっています。ただし、こうした検査キットをすべての医療機関が用意しているわけではなく、現時点では発熱外来を持つ医療機関などに限られています。なお、今後は薬局等でも販売される可能性があります。

ですので、発熱したときに慌てることのないよう、検査が受けられる最寄りの医療機関を探したり、かかりつけ医に前もって同時検査のできる医療機関を聞いておくなど、情報収集をしておくことをおすすめします。

備えあれば憂いなし!事前の準備と服薬継続を

「ぜん息だから」「COPDだから」といって、インフルエンザや新型コロナを必要以上に恐れることはありません。ご家族を含めて日頃からの手洗いうがいなどで感染症予防をしっかりと行い、ワクチン接種で発症確率や重症化リスクを下げておくことで事前に備えることができます。発熱したときに備えて、情報収集もしておきましょう。また、ぜん息患者さんであれば、自身の状態を把握するためのピークフロー測定や、ぜん息日記をつけることで、症状が出てくる前に、事前に悪化の兆しを察知できます。

最後に申し上げておきたいのは、ぜん息・COPD患者さんにとって重要なことは、日頃の治療や服薬をきちんと継続することです。第一回でも述べたように、インフルエンザにかかったとしても、処方されているぜん息やCOPDの服薬を中断しないようにしましょう。

相良 博典(さがら・ひろのり)先生

1993年獨協医科大学大学院医学研究科修了。同大学病院で勤務した後、2013年に昭和大学医学部内科学講座・呼吸器アレルギー内科学部門の主任教授に就任。2017年より同大学病院内科学講座主任、副院長を務め、2020年4月に現職就任。喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸器感染症における豊富な診療経験を持つ。日本呼吸器学会呼吸器専門医。日本アレルギー学会アレルギー専門医。第68回日本アレルギー学会学術大会大会長。