本文へ移動

知っているようで知らない「セルフマネジメント」~その最新情報~
①『呼吸器疾患患者のセルフマネジメント支援マニュアル』が改訂されました!

セルフマネジメントとは、患者さんが自分の病気のことを理解し、病気と上手に付き合う力を身につけること。セルフマネジメントを取り入れることで、ぜん息やCOPDの増悪ぞうあく(発作)を予防し、生活の質(QOL)の維持・向上につながることが分かっています。みなさんがセルフマネジメントに取り組めるようさらに長い間続けられるよう、新しい『呼吸器疾患患者のセルフマネジメント支援マニュアル』が作成・発行され、多くの医療機関で患者さんのセルフマネジメントを支援する準備が整えられています。今回は、このマニュアルの主任編集ワーキンググループメンバーの順天堂大学医療看護学部の若林律子教授に、セルフマネジメントの最新情報を、3回に分けてご紹介いただきます。

ポイント!

セルフマネジメントは、ぜん息・COPDの増悪予防につながります!

若林 律子 先生 順天堂大学医療看護学部
同大学院医療看護学研究科教授
若林 律子 先生

カナダの研究からわかったセルフマネジメントの効果

セルフマネジメントとは、患者さんが自分の病気のことをよく理解して、薬物療法をはじめとする治療を主体的に続けながら、運動や食事などの生活習慣をできる範囲で少しずつより健康的な行動へ改善するなど、自らの体調を管理することです。

カナダ人医師のボルボー教授の研究から、ぜん息やCOPDの増悪(発作)、入院予防、生活の質(QOL)の向上に、セルフマネジメントが科学的に有効であることが明らかになり、日本でもセルフマネジメントを支援する医療機関が増えてきました。

医療者は患者さんのセルフマネジメントをサポートする存在

セルフマネジメントとは、その名が示す通り、患者さんが「ご自身(セルフ)」で体調を「管理(マネジメント)」するものですが、患者さん一人で頑張るのではなく、ご家族、同居者などはもちろん、医師、看護師、理学療法士、管理栄養士といった医療者も患者さんがセルフマネジメントできるようサポートをしていきます。

これまでは、「患者教育」という言葉が使われてきましたが、医療者の一方的な介入ではなく、セルフマネジメントを続ける患者さんやご家族を医療者が支援できるように、医療者は、患者さんと一緒に目標を設定し、ゴールを目指すなど、その役割が見直されました。

そのため私たちは、医療者が呼吸器疾患の患者さん・ご家族を適切にサポートし、その生涯にわたって健康増進や増悪予防のためのセルフマネジメントを継続できるよう、『呼吸器疾患患者のセルフマネジメント支援マニュアル』を医療者向けに発行しました。

これは、かつて2007年に『呼吸リハビリテーションマニュアル ─ 患者教育の考え方と実践 ─ 』として作成したものを、2022年に改訂第2版として、タイトルや内容を一新したものです。

セルフマネジメント支援マニュアルの狙いとは

一口にセルフマネジメントといっても、病気の重症度や生活環境などは、患者さんごとに異なるため、実践方法は千差万別です。その実践方法を決める際に、患者さんに対し医療者が適切に支援を行うための基本となるポイントが、この支援マニュアルには多く盛り込まれています。さまざまな薬物療法の詳細や身体活動性の向上を目指した各種運動の方法、食事や栄養管理、患者さんの不安への対応などに関して具体的にどうすればよいのかなど、詳しく記されています。

また、この支援マニュアルが発行されたことにより、セルフマネジメントへの標準的な支援が全国どこでも受けられるようになることが期待されています。

【参考】若林先生のカナダ留学について、レポートが掲載されています
カナダで見た、COPD治療の最前線。国際看護の専門家が語る経験とは。(別ウィンドウで開きます)

次回は、セルフマネジメントを実践する上で大切なことを具体的な事例も交えながらご紹介します。

若林 律子(わかばやし・りつこ)先生

1995年東京医科歯科大学医学部保健衛生学科看護専攻卒業。2011年日本医科大学大学院呼吸器感染腫瘍内科学博士後期課程修了。博士(医学)。2021年度より現職。セルフマネジメントプログラムとCOPD治療に関する知見を深めるため、カナダ・マギル大学ヘルスセンター・チェストインスティテュートに留学。欧州呼吸器学会、米国胸部疾患学会、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会、日本看護学会に所属。『呼吸器疾患のセルフマネジメント支援マニュアル(呼吸リハビリテーションマニュアル——患者教育の考え方と実践——改訂第2版)』(2022年)の主任編集ワーキンググループメンバー、事務局を務めた。