梅雨時は、気温や気圧の変化が大きく、また湿気によってカビやダニが増殖するなど、ぜん息発作につながる危険が増える可能性があります。『喘息予防・管理ガイドライン 2021』にも、気温や気圧の変化・雷雨などがぜん息の悪化につながると記されています。そこで、日本アレルギー学会のアレルギー専門医・アレルギー指導医で、国立病院機構三重病院の名誉院長であり、現在、同病院にて特別診療・研究役の藤澤隆夫先生に、湿度、気温、気圧とぜん息との関係などについて教えていただきました。第1回は、カビやダニの繁殖につながる梅雨時の湿気への対策についてご紹介します。今年は各地で史上最も早い梅雨明けとなりましたが、7月に入ると戻り梅雨となる可能性もありますので気を付けましょう。
梅雨時はカビやダニを繁殖させないようこまめな換気と掃除をしましょう!
国立病院機構三重病院 小児科
特別診療・研究役
藤澤 隆夫 先生
ぜん息の発作は季節の変わり目に起きやすいことが知られています。ぜん息は気道性過敏症といって、いろいろな刺激に敏感になっていますので、朝晩の寒暖差が大きくなり、ライノウイルスというウイルス感染が流行しやすい秋が最も多くなります(入院患者数はこの時期がピークになります。)。真夏は少ないですが、その前に来る梅雨時期も秋に次いで要注意です。
梅雨は、雨が降り続きじめじめしていることから不快な方も多いと思いますが、湿った空気そのものは、ぜん息に害を及ぼしません。湿気は、炎症で敏感になったぜん息患者さんの気管支には、かえってやさしい存在とも言えます。
ただし、長期間の高湿度から生じるカビやダニといった、アレルギーの原因物質(アレルゲン)はぜん息の大敵です。高温多湿の環境は、カビやダニの繁殖にはもってこい。さらに、ダニのフンや死がいなども増え、結果としてぜん息の発作が起こるリスク増につながるのです。
高温多湿の梅雨時は、カビやダニを繁殖させない工夫が必要です。
第一に、こまめな換気。室内に溜まった湿気を除くために、エアコンの冷房を使うのもよいでしょう。ただし、乾燥した冷たい空気はぜん息発作の引き金になりかねないので、設定温度は28℃くらいにし、直接冷気を吸い込まないよう注意しましょう。
その他に、こまめな掃除も大切です。できれば毎日、少なくとも3日に1度は床掃除をしましょう。また、寝具類はダニの温床になりかねません。晴れた日には布団を干す、布団乾燥機を活用する、掃除機を頻繁にかけるなどによりベッドや布団は清潔に保ちましょう。
対策のポイントは、こちらも参考にしてください。
●実践しよう!悪化因子への対策(ダニ対策の実践)(別ウィンドウで開きます)
カビやダニをよせつけないよう室内環境を整えるのはとても大切なことですが、梅雨は毎年訪れますし、完璧な環境を整えることは難しいです。
そのため、自分自身のアレルゲンが何であるのかきちんと理解した上で、症状をコントロールすることが肝心です。日頃から主治医に相談しながら、悪化の原因をできる限り遠ざけるよう努めるとともに、吸入ステロイド薬等の長期管理薬をきちんと吸入する習慣を身につけましょう。
次回は、気温とぜん息の関係についてご紹介します。
藤澤 隆夫(ふじさわ・たかお)先生
1980年三重大学医学部卒業。同小児科入局。1986年米国メイヨークリニック留学。国立療養所三重病院(現 国立病院機構三重病院)小児科、同臨床研究部長、同副院長を経て、2015年同院長。2021年、同名誉院長。現在、同病院にて特別診療・研究役。日本アレルギー学会 アレルギー専門医・アレルギー指導医。日本小児科学会 小児科専門医。医学博士。一般社団法人日本小児アレルギー学会 前理事長
天気とぜん息の関係を知っておきましょう①