コンテンツ すこやかLIVE

インタビューの様子

薬剤師の1日に密着
みんなの知らない薬剤師の仕事のウラガワに迫る!

ぜん息やCOPDの治療において、正しい服薬は最も大切なことの一つです。実はみなさんが薬局で薬を待っている時間には、「薬のプロフェッショナル」とも言われる薬剤師の重要なお仕事が隠されているのです。みなさんの知らない薬剤師のお仕事の“ウラガワ”を、なの花薬局に勤める薬剤師で、アレルギー疾患療養指導士(CAI=Clinical Allergy Instructors)の資格を持つ金枝有香さん、加藤由衣さんのお二人にお話をうかがいました。

ただ渡すだけじゃない 患者を支える薬剤師の仕事

金枝さん

薬剤師は処方せんに書いてあるとおりに薬を集めて、ただ渡すだけではありません。患者さんが他の薬を使っていないかなどの情報も踏まえて、処方せんに書いてあることが患者さんの病態にとって正しいか、量や使い方が間違っていないかなどを個別にチェックしています。処方せんに疑問点があった時には、医師に確認する「疑義照会」をします。医師が診察や手術中で確認がすぐにできないこともしばしばあり、その際は患者さんに事情を説明します。このような場合はお待たせしてしまうこともありますが、患者さんの健康を考えると、確認ができないまま薬をお渡しするわけにはいきません。服薬指導は薬の説明のほか、飲み方の提案をしたり、ぜん息のお子さんなら、「吸入薬を吸い終えたら数秒間息を止める」など、効果がきちんと出るようなポイントを説明したりします。

加藤さん

服薬フォローも重要ですね。新しくお渡しした薬がその人に合っているか、副作用が出ていないかなどをおおむね1週間後に尋ねています。例えば「もらった薬を使ってから心臓がどきどきするようになった」と言われたら、医師に連絡をします。医師から、「その薬をやめてすぐ受診するよう患者さんに伝えて」と言われることもありました。服薬フォローがなければ、その薬を使い続けていた可能性があると考えると大事な役割だと思います。

細やかな服薬指導 生活パターンのヒアリングも

金枝さん

ぜん息の場合、気管支に直接届く吸入薬が基本になりますが、「ちゃんと薬を吸えているか分からない」という患者さんも多いです。私は「自分が掃除機になった気分で薬を吸いこんでください」と説明しています。また、「ホー吸入」といって、薬の通り道をつくって、より多くの薬が気管支へ届くための方法もお伝えしています。

参考:すこやかライフNo.56 特集「処方された薬を知って正しく使おう」(別ウインドウで開きます)

加藤さん

うまく吸入することのできないお子さんについては、ご家族の方だけでなく、お子さんご本人にも説明します。高齢者に関しては、実際にその場で吸ってもらい、一緒に動作を確認しています。1回伝えても正しく使えていないことが多いので、長期的な確認と服薬指導が必要です。カチッと音が鳴る吸入薬や、逆に操作をしても音が鳴らない吸入薬など、さまざまな薬があるので、そちらも併せて紹介しています。

金枝さん

「吸入を忘れてしまう」という方もいらっしゃいます。ぜん息はきちんと毎日服薬を続ければまったく症状が出ない状態までコントロールできる病気です。生活パターンに合わせて別の薬をお渡しすることもできるので、「1日1回なら吸入できるのに……」といった相談も大歓迎です。

加藤さん

私は保護者の方から「子どもが薬を飲んでくれない」と相談されたことがあります。今は症状が落ち着いていても大人になって再発することもあるので服薬はとても大切です。そのときは、お子さんご本人が薬局に来た際に生活パターンをうかがい、「ご飯を食べる前に吸入したらどうか?」とアドバイスをしました。保護者の方に言われるよりも薬剤師から直接ご本人にお話しした方が伝わるようにも思います。

地域の健康を担う拠点に CAIを持つ薬剤師の抱負

金枝さん

私の勤めている新砂店では眼科、皮膚科、呼吸器内科の処方せんをもらうことが多く、アレルギーがとても身近だったこともあり、社内のCAI養成講座に参加してCAIの資格をとりました。家の掃除の仕方など、患者さんの生活についても相談に乗っていきたいと思っています。薬局が地域の健康を担う拠点になっていけばいいと思いますし、薬の指導にとどまらない健康サポートをする薬剤師になっていきたいです。

加藤さん

私も店舗の近くに皮膚科や耳鼻科があり、先輩に勧められてCAIの資格を取得しました。いろいろな薬局で薬をもらうと、同じような薬が重複していたり、飲み合わせに注意が必要だったりすることがあるので、かかりつけ薬局だけでなく「かかりつけ薬剤師」を活用して薬の飲み方や生活のことなども相談してほしいです。今後は医師をはじめとする多職種とも連携しながら、私の知識を活かして服薬指導、療養指導ができたらよいと思います。

薬局薬剤師の1日に密着!

薬局の薬剤師さんはどんな1日を送っているのでしょうか。なの花薬局新砂店(東京都江東区)の金枝有香さんに密着して、お仕事の“ウラガワ”に迫りました。

8:30出勤

LINE公式アカウント「つながる薬局」へのメッセージをチェックする様子

実は薬局には機械がたくさんあります。プリンターや粉薬を1つ1つ袋詰めするための分包機のスイッチをオンにするのが1日のスタートです。

他にも、LINE公式アカウント「つながる薬局」に患者さんからメッセージが届いていないか確認します。

9:00開店

開店後は調剤業務を始めます。私のいる店舗では、在宅訪問をする日は薬局が混まない朝一に行くことが多いです。足が悪い方など薬局にひとりで来ることが難しい方に薬を届けたり、薬の管理が困難な方には「お薬カレンダー」に薬をセットしたりします。

12:00調剤業務、服薬指導、疑義照会など

薬品棚から薬品を取り出す様子

調剤業務が最も忙しいのはお昼ごろ。お昼休憩は順番に取ります。

患者さんから処方せんを出してもらって、処方せんの入力をし、薬品棚から薬を取り集めます。 

処方せんに疑問がある場合や、副作用が出る可能性がある時は、その都度、医療機関に疑義照会をします。医師が手術中などで応じてもらえないこともありますが、そのままお渡しはできないので、その場合は患者さんに薬を確認する必要があることを説明します。

18:30閉店

閉店後、各種書類を準備する様子

新砂店では18時か18時半に閉店します。閉店後は患者さんへの吸入指導の情報や現在の服薬状況など、医師にフィードバックのための情報提供書を作成し、ファクスなどで送ります。

帰宅後講座受講

最近はオンラインで受けられる研修も多いので、薬剤の最新情報を学ぶための勉強を帰宅後や休日にすることもあります。

写真 金枝 有香 さん
なの花薬局 新砂店 薬局長
金枝 有香さん
読者へのメッセージ
自己判断で薬の中断をしないで

症状が一時的におさまったように見えていても、ぜん息は言わば、「ぼや(小さな火事)」がずっと起こっている状態で、増悪は火事になった状態です。かげで炎症(=ぼや)が続いている可能性があります。薬を自己判断で中断することはやめましょう。

写真 加藤 由衣 さん
なの花薬局 昭島駅前店
加藤 由衣さん
読者へのメッセージ
生活について何でも気軽に相談を

どんな些細なことでもよいので、何でも相談してほしいです。薬の相談だけではなく、食事をはじめとする生活の相談をしていただければ、栄養士などの専門家と協働することもできます。困ったことがあったら、気軽に何でもお話ししてもらえるとうれしいです。