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運動をしましょう、続けましょう② ~ぜん息の方が運動する際に注意すること~

今回は、ぜん息の方が運動をする際に考えておくべき注意点をご紹介します。運動誘発性ぜん息を予防しながら、楽しく、安全に運動するためのポイントを、東京女子医科大学内科学講座呼吸器内科学分野教授の桂秀樹先生に伺いました。

ポイント!

自分の好きな運動を楽しみながら、長く続けてトータルコントロールを目指しましょう!

桂秀樹 先生 東京女子医科大学内科学講座
呼吸器内科学分野教授
桂秀樹 先生

ぜん息をコントロールし、運動を楽しむ

運動をきっかけにぜん息発作を起こすことがあります。いわゆる「運動誘発性ぜん息」です。発作の誘因は、冷気、乾燥した空気、スギやヒノキなど各種花粉、硫黄酸化物やPM2.5といった大気汚染物質など、人によってさまざまです。運動をする際には、自分がどんな時に発作を起こしやすいのか、記録し確認しておくことが大切です。それにより、苦しくない範囲でマスクを着用したり、寒い日、花粉の多い日には外での運動を控えたりなどの配慮をしましょう。

なお、ぜん息のコントロールが不十分な方は、運動によって症状がさらに悪化する場合があります。日頃からかかりつけ医と連携し、良好なコントロールに努めることが肝心です。安定期のコントロールがきちんとできていれば、運動を制限する必要はありません。日頃の治療をしっかり行い、運動を楽しみましょう。

事前の気管支拡張薬使用などで運動誘発性ぜん息を予防

運動誘発性ぜん息には、前述のように季節や環境要因への配慮に加え、いくつか予防策があります。一つが、運動開始の15~30分前に短時間作用性β2刺激薬を使用することです。薬の効果は2~4時間持続するので、発作の予防につながります。他に予防効果が高いのが、ウォーミングアップ。いきなり激しい運動を始めるのではなく、5~10分くらいゆっくりとしたウォーキングやストレッチ体操で体を慣らします。運動後のクールダウンも大切です。ストレッチなどをしながら呼吸を整えることで、運動後に生じるぜん息症状を防ぐことにもなります。ウォーミングアップ⇒運動⇒クールダウンはワンセット。COPDの方も同様です。

もしも運動中、あるいは運動後に運動誘発性ぜん息が生じた場合、速やかに短時間作用性β2刺激薬をリリーバー(症状改善薬)として用い、安静にします。運動による発作だからといって、特別な対処方法が必要なわけではありません。通常のぜん息発作と同様の対応を落ち着いて行えば、症状はおさまります。発作の際の息苦しさを軽減するために、横隔膜を使った腹式呼吸をマスターしておくのもよいでしょう。

水泳は効果的? 好きな運動に取り組むのが長続きの秘けつ

ぜん息、とくに小児ぜん息には、よく水泳がよいと言われています。水泳は他の運動に比べ、乾燥した空気を吸い込むことが少なく、成長段階にある小児の呼吸筋強化を導く可能性があるとされています。発作を起こしにくく、安全に取り組める運動の一つといえますが、水泳の効果に関してはっきりとした科学的根拠が示されているわけではありません。どんな運動でも、楽しんでできるものを続けましょう。サッカーでも、野球でも、ランニングでも。楽しみながら行うことが運動の醍醐味であり、継続するための最大のモチベーションです。

次回はCOPDの方が運動をする際の注意点などについてご説明します。

環境再生保全機構「実践編 腹式呼吸」(別ウィンドウで開きます)

桂秀樹(かつら・ひでき)先生

1985年岩手医科大学医学部卒業。博士(医学)。東京女子医科大学八千代医療センター呼吸器内科教授などを経て、現在、東京女子医科大学内科学講座呼吸器内科学分野教授。日本内科学会認定内科医、日本呼吸器科学会専門医・指導医・代議員、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会理事。専門分野は呼吸器疾患全般、とくに慢性閉塞性肺疾患(COPD)。