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第39回日本小児臨床アレルギー学会共催 市民公開講座
「知りたいこどものアレルギー」レポート(全10回)
⑦小児皮膚科医が考えるアトピー性皮膚炎の外用コントロール(質疑応答)

2023年7月15日(土)~16日(日)、福岡国際会議場にて第39回日本小児臨床アレルギー学会学術大会が行われ、その中で、16日に環境再生保全機構(ERCA)主催による市民公開講座「知りたいこどものアレルギー」(座長:昭和大学小児科学講座 今井孝成教授)が開催されました。

本コラムでは、公開講座で行われた専門医による3つの講演「食物アレルギー」、「アトピー性皮膚炎」、「小児気管支ぜん息」の概要と、それぞれの質問に対する回答を全10回にわたりレポートしていきます。

連載第7回の今回は、福岡市立こども病院皮膚科科長、こどもアレルギーセンター副センター長の工藤恭子先生が、事前に寄せられた質問に答えられた様子をレポートします。

Q.
かゆみの原因と、治療薬について

13項目の血液アレルギー検査を行い、全て陰性でしたが、手首や関節部分の乾燥、かゆみがひどく治りません。何が原因なのでしょうか。また、かゆみに効く飲み薬はありますか。

A.

アトピー性皮膚炎の場合、基本的にまず原因を調べましょうと言って採血することはあまりありません。皮膚の炎症の具合を知りたいということで採血をすることはたまにあります。

例えば今日お話したみたいに、花粉の時期だけ目のまわりがすごく炎症がひどくなるお子さんとか、あとは「犬に触った後にすごく悪くなる」など、明らかな原因・誘因がわかっている場合には調べても良いのではないかと思います。

原因については、先ほど病態のお話をしました。バリア機能障害と炎症とかゆみがあること。やはり治療の基本は外用治療ですので、スキンケアと外用治療が一番重要ということはおわかりいただけたかと思います。

かゆみに対しては、よく処方されるのは抗ヒスタミン剤が多いかと思いますが、ヒスタミンはアトピー性皮膚炎のかゆみについて、全ての原因というわけではありません。そのため、抗ヒスタミン剤というのは本当に100パーセント期待できる薬剤とはいえないのです。

また、全身療法になりますけれども、外用治療でなかなかコントロールが難しい場合は生物学的製剤のデュピクセントとか、13歳以上であればミチーガなどのかゆみをブロックするような注射も出ていますし、それらが今後数年のうちに低年齢化してくると思いますので、そういったものも視野に入れて主治医の先生と相談されても良いのではないかなと思います。

Q.
汗とアトピーの関係、対策法

汗に反応してアトピーが悪化しているように思います。対策を教えてください。

A.

汗とは上手に付き合っていく必要がありますが、重症のアトピー性皮膚炎になると、浸出液という汁は出てくるのですが、汗はかけなくなってくるのです。汗をかけるというのは、状態としてはそんなに悪くないということが言えます。汗というのは悪いことばかりではなくて、お肌、角層を潤してくれますし、皮膚温を下げてくれる効果もあります。汗の中に抗菌ペプチドといって皮膚表面の細菌をやっつけてくれる効果もあるわけです。汗をかくことはすごく良いことですので、ぜひスポーツを何かしていただいて、汗をかいて欲しいと思います。

ただそのまま放っておくと、今度は汗の成分が変化してきて、皮膚の表面の細菌が増えたり、カビが増えてそれに反応してかゆくなってきたりということもありますし、ふやけることで今度はバリアがまたダメージを受けて……と悪循環になる可能性もあります。よくお勧めしているのは、汗をサッと流すことです。学校だと難しいですけれど、お家にいらっしゃればサッとシャワーを浴びるのが一番良いかと思います。学校ならタオルとかを持って行っていただいて、休み時間とか体育の後とか、流せる分は流してもらって、流せない部分は濡れタオルにして押さえ拭きをしてあげると良いでしょう。

Q.
合併症の脱毛の治療

小学生の娘にアトピー性皮膚炎があり、脱毛症を発症しています。これまで光線治療を数回行いましたが、少し発毛したと思ったらまた抜け落ちる……の繰り返しです。まもなく思春期を迎える時期なので、何とか髪の毛が生える治療方法を教えてください。もしくはアトピー性皮膚炎が治れば発毛しますか。

A.

(円形)脱毛症はアトピー性皮膚炎で合併しやすい疾患の1つです。アレルギー疾患もそうですが、自己免疫疾患の1つですので、他の膠原病や甲状腺の病気などと合併することもあります。採血をして調べることもありますが、ただそちらが治ったからといって脱毛症が治るとは限りませんので、同時進行で治療していくことになります。

治療としては、どんどん抜けてくる急性期であればステロイド外用剤が最も効果があります。紫外線治療をされているということですが、症状固定期と言って、抜けないけれども生えてこないという時期には、紫外線であったり、免疫療法と言って無理やりかぶれさせることで発毛を促す治療や、他にはスプレーで液体窒素を噴霧する治療のような選択肢があります。大人であれば最近保険適用になったJAK阻害剤という内服薬がありますが、こちらは15歳以上からですので、それまではそのような治療しかないのが現状です。

アトピー性皮膚炎に限らずですが、小児の場合は円形脱毛症かなと思ってみていくと、自分で髪を抜いてしまう抜毛症もよく合併します。脱毛症と抜毛症の両方が混じっていることも多いのですが、抜毛がメインになってくると本人が気づいていないこともありますので、本人に意識してもらうことから始めるしかありません。毎日鏡でチェックして、「これくらい生えたね」とか「毎日育ててね」とかそういった声かけをしています。

Q.
日焼けの対処法

アトピー性皮膚炎と日焼けの関係、また日焼け止めの使い方などを教えていただけますでしょうか。

A.

日焼けは皮膚のバリアにダメージを与えてしまいます。そのため、日焼け止めももちろんですが、私は個人的には日焼け止めを塗ることよりも日焼けした後のお肌をしっかり保湿することが大切だと思っています。バリアを整えてあげると、紫外線によるダメージも減りますので、日焼けしたときほど保湿をしていただけたらと思います。

日焼け止めに関しては症状にもよりますが、防御力がそれほど強いものでなくとも、SPF30以上でPAが2+以上で良いと思います。小学生のお子さんの場合は日中、学校に行っている間は塗り直しがなかなかできないので難しいかとは思います。あとは日焼け止めを落とすことです。泡で落ちるタイプなのかクレンジングが要るタイプなのか、お湯だけで落ちるタイプなのかは商品によって結構違いますので、使用方法など説明書を確認して、肌に合うものを使っていただけたらと思います。

次回からは、東海大学医学部付属八王子病院小児科医長、講師平井康太先生による「小児気管支ぜん息」の講演の模様をレポートいたします。

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