大関和に学ぶ看護師誕生の歴史 ③高い専門性を磨き、より良い治療につなげる

2026年春からのNHK連続テレビ小説「風、薫る」の主人公のモチーフとなった看護師・大関和(おおぜき・ちか/1858-1932)の生涯と看護師誕生の歴史を振り返りながら、看護師の仕事について考える連載の第3回目は、アレルギー疾患患者を専門に指導する「小児アレルギーエデュケーター(PAE)」の益子育代さん(なすのがはらクリニック)に、PAEの仕事や看護師がより高い専門的知識を身につける意義について聞きました。

――小児アレルギーエデュケーター(PAE)とはどんな資格ですか。

ぜん息をはじめとするアレルギー疾患の治療では、患者さん自身による自己管理が非常に重要になります。病気に関する正しい知識や治療の方法、日常生活での工夫を身につけ、それを継続していくことが求められます。

しかし、こうした自己管理を専門的に指導・支援できる医療者は、それまでほとんどおりませんでした。そこで日本小児臨床アレルギー学会では、2009年に「小児アレルギーエデュケーター(PAE)」という資格制度を創設しました。

PAEは、最新の専門知識に加えて、行動変容の理論や支援技術を身につけ、患者さんのアドヒアランス――つまり、患者さんが自ら病気を理解し、治療方針の決定に主体的に関わり、その治療を継続して実践できるようになること――の向上をめざします。

全国で719人(2025年7月時点)の看護師、薬剤師、管理栄養士が資格を有して活動しています。どの施設にPAEが在籍しているかについては、日本小児臨床アレルギー学会のホームページで公開されています。

――PAEの具体的な仕事内容を教えてください。

ぜん息治療で使用する吸入器の正しい使用方法、アトピー性皮膚炎治療でのスキンケアの方法、軟膏の適切な塗り方の説明、食物アレルギー治療での除去食の作り方、アナフィラキシー出現時の緊急対応、アドレナリン自己注射器(エピペン)の使用方法などを指導します。

具体的に実行できるように心がけますが、誰もが1度指導を受けたからとすぐ実行できるわけではありません。治療に納得いかない、子供が吸入を嫌がる、面倒くさがるなど治療に負担を感じる、わかっているけどできないなど、様々な困難が生じます。これらの困難にも寄り添って一緒に解決していきます。

地域でも高まるニーズ

――PAEの資格を持つ方はどのような場所で活躍されていますか。

医療現場では、アドヒアランスの低いがゆえに治療がうまく進まない患者さんの対応で呼ばれることも多いです。

また、近年では地域での活動にニーズが高まっています。アレルギー疾患対策基本法(※)の制定により、地域で吸入指導、スキンケアや学校や園での食物アレルギーの緊急時対応などの研修・講習が増え、PAEはその講師として引っ張りだこの状態です。環境再生保全機構の「ぜん息患者教育スタッフ養成研修」でも、多くのPAEが連携しました。そこで養成された人たちが地域で勉強会を開くなどネットワークができています。

(※アレルギー疾患対策の基本方針と関係者の役割を定め、国全体で総合的に推進していくことを目的として定めた法律)

子どものアドヒアランスをどう高める?

――ぜん息の子どものアドヒアランスについてどのように対応されていますか。

年齢やその子の性格、親子関係などに合わせて対応することが大切です。子どもは1回嫌いだと思ったら、やってくれなくなることもあるため、いかに興味を持ってもらうかが大事です。例えば、乳幼児には器具を怖がらせないで慣れさせることから、小学校低学年の児童にドライパウダータイプの吸入薬(DPI)を指導する場合は、吸入の一連の流れをいくつかのステップに分けて、ゲーム感覚でクリアしていくなど、行動療法を活用した工夫をしています。これらのやりとりは家庭で嫌がらずに行う上で、保護者にとってもモデリングとなるためとても重要な場面になります。

チーム医療の中で重要な「専門性」

――看護師がPAEのような高い専門性を身に着けることの意義を教えてください。

友人の医師から「看護師は自分たちにない視点を持っている。その意見は、患者さんを良くするうえで、とてもありがたい」と言われたことがあります。チーム医療の中で、看護師が専門性を持ち、患者さんの状態をチーム全員にわかりやすい言葉で的確に伝えることが重要だと思います。

――看護師の先駆けである大関和について、どう思いますか。

私が勤務する「なすのがはらクリニック」は栃木県大田原市にありますが、偶然にも大関和の出身地が現在の大田原市です。私より約100年も前に生まれた方ですが、英米の看護の異文化が入ってきた時代に、自分が必要だと思ったら周囲に反対されたとしても根拠をもって進んでいく、すごいパワーを持った人だと思います。

――最後に、PAEを目指す看護師・薬剤師・管理栄養士にエールをお願いします。

患者さんに熱心に関わっているのだけれど、上手くいかないということがあると思います。1人でやっていると行き詰まりを感じることや、自分が必要だと思っても周囲に理解されないこともあるでしょう。そんな時に仲間がいると、励ましあいやアドバイスをしあうなどができます。各地でPAEのブロック会があるので、勇気を出して行ってみてください。アドバイスや元気をもらって前向きになれます。よかったら、そのまま進んでPAEの資格を取って、仲間になってもらえたら嬉しいです。

「ぜん息患者教育スタッフ養成研修」など環境再生保全機構が開催する研修について、参加希望の方は●こちら(別ウインドウで開きます)からお申し込みください。

益子育代(ますこ・いくよ)先生

なすのがはらクリニック小児アレルギーエデュケーター。1983年群馬大学医療技術短期大学看護学科卒業後、群馬大学医学部附属病院勤務。看護教員経験後、1998年筑波大学体育修士(健康教育)修了。群馬県立県民健康科学大学講師、国立成育医療センター(旧国立小児病院、現国立成育医療研究センター)アレルギー科、都立小児総合医療センターアレルギーエデュケーターを経て、現職。環境再生保全機構(ERCA)の「ぜん息患者教育スタッフ養成研修」の講師も務めている。(2026年現在)