ぜん息やCOPDにまつわる知っておくとためになるお話を紹介するドクターの小話。すこやかライフ編集委員で、帝京大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー学 教授の長瀬洋之先生が、3回にわたって担当します。第2回の今回は「呼気一酸化窒素(FeNO)」について詳しく解説します。
ぜん息などの気道の病気では、気道の中に「むくみ」や「ただれ」に例えられる炎症が起こっています。この炎症の程度を直接調べることができれば、診断や治療にとても役立ちます。しかし、毎回内視鏡で気道の中を観察したり、組織を採取して顕微鏡で調べたりすることは現実的ではありません。
痰の検査も有用ですが、痰が出ない患者さんもいますし、結果が出るまでに時間がかかるという問題があります。
そこで開発されたのが、「吐く息の中の一酸化窒素(NO)」を測定する方法です。近年は NIOX MINO® (ナイオックス マイノ)などの機器により、外来で簡単に測定できるようになりました。
FeNOとは「呼気中一酸化窒素」のことで、気道の炎症の程度を反映する指標です。特に、アレルギー性の炎症(タイプ2炎症※1)があると数値が上昇します。
これは、IL-4やIL-13※2といった炎症を引き起こす物質の影響で、気道の細胞から一酸化窒素が多く作られるためです。
つまり、FeNOが高い場合には、気道にアレルギー性炎症がある可能性があり、ぜん息を疑う手がかりになります。
※1免疫システムが過剰に反応して引き起こされる炎症
※2インターロイキン-4、インターロイキン-13。免疫細胞などから分泌されるサイトカインと呼ばれるタンパク質
FeNOは、次のような病気の診断の参考になります。
これらは「咳が長引く」タイプの病気ですが、長引く咳の原因はさまざまであるため、FeNOは診断の手がかりとして役立ちます。
また、FeNOが高い場合は、吸入ステロイド薬が効きやすい状態であることが多いと考えられます。言い換えると、「診断名にかかわらず、炎症のタイプをみて治療を考える」ためのヒントにもなる検査です。
測定はとても簡単です。手のひらサイズの装置に向かって、一定の速さで息を吐くだけです。1分ほどで結果がわかります。
当院でも外来でその場で測定できるため、疑わしい場合には積極的に活用しています。
正確に測るためには、一定のスピードで5秒ほど安定して息を吐く必要があります。少しコツがいりますが、スタッフがサポートしますので、成人の方であれば多くの場合問題なく測定できます。小学生くらいのお子さんでも可能です。
FeNO測定は保険適用で行うことができ、自己負担(3割)の場合は数百円程度です(医療機関により多少異なります)。
FeNOは診断時にはとても役立つ検査ですが、治療中に毎回測定する必要はありません。吸入薬の量を細かく調整するほどの精度はないため、治療方針を見直すときなどに適宜測定すれば十分です。
FeNOは、小さな機器で簡単に測定できるにもかかわらず、ぜん息などの診断に非常に役立つ検査です。医師から勧められた場合は、ぜひ一度検査を受けてみてください。
長瀬 洋之先生
1994年東京大学医学部医学科卒業。96年東京大学物療内科勤務、2002年に医学博士取得。03年帝京大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー学、16年6月から現職。日本アレルギー学会 気管支喘息ガイドライン専門部会作成委員。
ドクターの小話WEB版2 ぜん息診断の手がかり~呼気一酸化窒素(FeNO)とは?②(全3回)