記録で見る大気汚染と裁判
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倉敷公害訴訟

裁判

裁判では、多数の書面が裁判所に提出または記録されます。双方の主張であったり、証拠書類であったり、証言を書きとめた記録だったり、判決文だったりします。 これらの記録を見ることで、裁判の内容がわかりやすくなります。
公開資料に含まれる個人情報の一部は、独立行政法人等の保有する情報公開に関する法律、その他関係規程により不開示としています。

訴状

訴状とは、裁判所に民事訴訟を起こす時に、訴える人である原告が裁判所に提出する、訴えの内容について述べた文書のことです。
公害裁判の訴状には、訴えられる対象となった大気汚染の原因をつくった工場と、被害を受けた原告が特定されています。なぜ原告が裁判を起こさなければならなかったのか、原告が求めるものが何かを簡潔に記しています。

倉敷公害訴訟では、
・コンビナートを形成する企業群の共同不法行為責任を追及
・汚染物質を環境基準以下にすること
・公害患者への損害賠償
を求めて、公害患者が企業8社を訴えています

1次訴訟訴状

2次訴訟訴状

3次訴訟訴状

証人調書

証人とは裁判所に対し、自己の経験から知ることのできた事実を述べる第3者のことです。原告側と被告側の証人がいます。
倉敷公害訴訟では、原告側は学者や医者、被告側は企業の社員などが証言台にたちました。証人調書とは証言台で話した内容を裁判所が記録した筆記録です。
証人調書は論理だけでなく証人の人間味を伝える、読んでおもしろい資料です。

肩書は証言当時のものです。

立場 証人名 論点 内容
原告 河野通博
関西大学文学部教授
関連共同性
関連共同性
水島の開発の歴史、コンビナートの形成史を軸にして明らかにする
丸屋博
水島協同病院(医師)
公害病の被害
被害
公害病の被害について、著書『公害にいどむ』をもとに証言
坪田信孝
広島大学医学部助教授
大気汚染と呼吸器症状との関係性
疫学
岡山県県南の住民健康調査と環境庁の汚染濃度データの解析により検討する
奥田 穣
八代学院大学教授
大気汚染物質の拡散状況
気象
水島地域の気象、海陸風の特徴をもとに明らかにする
被告 橋本道夫
財団法人国際湖沼環境委員会非常勤委員
大気汚染と呼吸器疾病との因果関係
被害
公害健康被害補償法制定や環境基準設定等に責任者として関与をした立場から、大気汚染と呼吸器疾病との医学的因果関係を否定する
香川 順
東京女子医科大学教授
疫学調査に基づく大気汚染と有症率との因果関係
疫学
疫学研究者の立場から疫学調査では大気汚染と有症率との関連性を推測できても、因果関係を評価することはできないことを立証する
長野 準
国立療養所南福岡病院名誉院長
三疾病(慢性気管支炎、肺気腫及び気管支喘息)と大気汚染との因果関係
被害
三疾病の定義、診断方法、病像、機序、病因等を明らかにすることで、三疾病と大気汚染にはかかわりがないことを立証する
前田和甫
東京大学教授
疫学調査に基づく大気汚染と健康被害との因果関係
疫学
当時の疫学調査の問題点及び疫学による原因究明の限界を明らかにすることで、大気汚染と健康被害との因果関係を評価することはできないことを立証する
白髪克也
医師
公健法の被認定者であるからといって指定四疾病の罹患の事実が証明されるものではないこと
被害
倉敷市における公健法の認定手続きの実情をもとに明らかにする
本郷博史
元岡山県庁職員
県の大気保全行政により水島地域の環境保全は十分に行われてきた
被害
昭和40年以降の大気保全行政とその成果を明らかにすることにより立証する
千秋鋭夫
(財)電力中央研究所勤務(会社員)
大気汚染物質の拡散状況
気象
岡山県南地域の海陸風とその上層部の気象の特性をもとに明らかにする
梅田博道
医師
公健法制度における病気の認定の実際と病因、等級認定の甘さについて
被害
症例検討会より明らかにする

準備書面

日本の民事訴訟で、双方の当事者または訴訟代理人が公開法廷における裁判官 の面前で、被告と原告が意見や主張を述べることを口頭弁論といいます。この口頭弁論は、事前に書面で準備しなければなりません。それが準備書面です。 準備書面を読むと被害者の視点と汚染者の理屈がわかります。

原告 準備書面のマークからクリックして資料を読めます
番号 主題 内容
第1分冊
倉敷公害と本裁判の意義
倉敷大気汚染公害と被害・加害の歴史
(1)水島コンビナート建設の経過
(2)水島大気汚染公害の特徴
(3)水島コンビナートによる被害と加害の歴史
(4)被告企業の犯罪性
(5)水島大気汚染公害と公害反対運動の発展
第2分冊
因果関係 因果関係総論
(1)公害裁判における因果関係の基本的考え方
(2)本件地域に対する侵害行為
(3)本件地域の大気汚染の原因
(4)本件地域における大気汚染と疾病の因果関係
侵害行為
(1)被告ら工業の立地操業の経過
(2)被告ら各事業所における汚染物質の排出機序・排出量
第3分冊
因果関係 侵害行為
(3)水島地域の大気汚染の実態と特徴
(4)水島地域の大気汚染の原因
第4分冊
因果関係 原告ら疾病罹患の事実
(1)本件疾病の概要
(2)原告らの本件各疾病罹患の事実
被告らの他原・他病論について
(1)他病
(2)他因
第5分冊
因果関係 原告らの本件疾病と原告ら居住地の大気汚染
(1)因果関係立証の基本的考え方
(2)倉敷市の大気汚染行政の推移
(3)倉敷市の大気汚染により原告ら居住地住民に健康影響が発生したことを示す各種調査
(4)岡山県における疫学調査
(5)大気汚染が原告ら罹患疾病の原因になりうること
(6)被告らの疫学調査批判について
第6分冊
共同不法行為
被告らの関連共同性
責任・違法性・時効論
差止請求
共同不法行為論
被告らの関連共同性
責任・違法性・時効
差止請求について
(1)大気汚染差止の必要性
(2)大気汚染差止の正当性
第7分冊
被害総論 被害総論 
(1)公害被害の特質と損害論
(2)損害賠償請求方式
(3)総体としての被害の損害算定
(4)包括請求と個別積算方式による試算
(5)各原告の個別積算試算例
(6)公害健康被害補償法等に基づく補償給付の損益相殺について
第8分冊
被害各論
(1)「症例検討」と梅田証言
(2)各論
被告
番号   内容
第1分冊
損害賠償請求 因果関係
(1)法的因果関係は事実的因果関係なしには成立し得ない
(2)本件三疾病の定義・病像及び病因に関する確立した医学的経験則
(3)本件地域の大気環境と国際的経験則から見たその安全性
(4)原告ら援用の間接証拠の評価
(5)昭和61年中公審専門委員会報告について
(6)大気環境政策関係文書のマネジメント性
(7)まとめ
第2分冊
損害賠償請求 本件地域の大気環境に対する被告らの寄与と責任限定
故意・過失・違法性
損益相殺及び消滅時効成立の主張
第3分冊
各原告の損害賠償請求の個別的問題 総論 
(1)鑑別すべき他疾病
(2)喫煙歴とアレルギー
(3)本件地域における公害健康被害補償制度の運用実態
(4)本件における主治医診断の特徴
(5)症例検討の医学的正当性について
(6)個別原告の損害の把握
第4分冊 各原告の損害賠償請求の個別的問題 各論 
各原告の概要
主治医の診断
疾病罹患及び病因
症状の程度
損害等について
第5分冊
差止請求 差止請求の不適法性及び不当性、環境基準について

書証

書証とは事実を証明する証拠となる文書を裁判所が見て調べる方法をいいます。実務上、文書そのものも書証といいます。

倉敷公害裁判では、原告側(甲)・被告側(乙)とアルファベットの組み合わせによる書証番号が採用されています。これは事務処理上の便宜を考えて、裁判所・原告・被告の三者により取り決められており、準備書面に書かれている主張に対応しています。書証には、研究論文や調査報告書、新聞記事、地図、生産工程表、統計データ、レントゲンフィルムなどがあります。

判決

裁判所が判決を下した理由・事実・判決主文などが書かれています。 倉敷公害裁判の場合は、1次地裁判決があります。
1次判決では工場の公害責任が認められています。
(2次3次訴訟は判決前に和解をします)


第1分冊(主文、事実)

第2分冊(理由、結論)

第3分冊(図表)

和解調書

倉敷公害訴訟では、裁判が続けられている最中に、原告と被告の両者が主張を譲歩して、権利関係に関する合意と訴訟終了について合意しました。裁判上で和解が成立した場合は、和解の内容が和解調書に書かれます。和解調書は判決と同一の効力を持っています。

倉敷公害訴訟の和解調書は2つあります。高等裁判所で係争中だった1次訴訟と、地方裁判所で係争中だった2次3次訴訟の物です。内容はほとんど同じです。

1次(高裁)の和解調書には、解決金として4億100万円を企業が支払う、和解金の一部を環境保健、地域の生活環境の改善などの実現に使用できるものとする、公害防止対策に努力するとあります。2次3次(地裁)の解決金は9億9100万円、これらを合わせて13億9200万円になります。

この解決金の一部を使って原告である公害患者は、みずしま財団(公益財団法人水島地域環境再生財団)を設立し、地域再生活動を行っています。


1次訴訟(高裁)

2次3次訴訟(地裁)
倉敷公害裁判記録はみずしま財団にて閲覧できます。
個人情報が記載されている資料はWebで公開していません。
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