記録で見る大気汚染と裁判
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東京大気汚染公害訴訟

■公害の原因

1960年ごろから、東京は自動車の排気ガスによる大気汚染に悩まされていきます。交通網の整備によって増え続ける自動車交通量と、軽油優遇税制によって増加するディーゼル車によってますます悪化していきました。ディーゼル車は、ガソリン車からはほとんど排出されない浮遊粒子状物質を大量に排出し酸化窒素もガソリン車も十数倍排出します。自動車排ガス汚染により、ぜん息などの呼吸器系の病気になる人が増えていきました。

■裁判の内容

1996年5月、道路の管理や排ガス規制の責任を負う国・東京都・首都高速道路公団、そして、ディーゼル車を製造・販売している自動車メーカー7社(トヨタ・日産・三菱・いすゞ・日野・日産ディーゼル・マツダ)をぜん息患者が訴えることになりました。これまでの大気汚染裁判では、公害健康被害補償法の認定患者が裁判の原告となっていましたが、1988年に公害健康被害補償法の新規認定打ち切りとなったため、東京では認定されていないぜん息・慢性気管支炎・肺気腫の患者も原告となりました。目的は、損害賠償と救済制度を新しく作ること、汚染物質の差止です。
2006年の地裁判決では、公害認定されていない未救済患者への損害賠償(国・都・公団)が認められましたが、自動車メーカーの責任、差止めについては認められませんでした。都以外は控訴しましたが、2007年8月に和解が成立しました。この和解により、国が独立行政法人環境再生保全機構に指示して、公害健康被害予防基金から東京都が実施する予防事業に充てるために60億円を拠出させ、東京都は2008年8月に東京都公害健康被害予防基金を設置しました。また、自動車メーカーが33億円、首都高速道路株式会社が5億円を東京都に拠出し、東京都内のぜん息患者に対する医療費助成制度を2008年8月に創設しました。また、PM2.5の環境基準設定、様々な道路公害対策を国や東京都が行うことを約束させました。現在も「東京地域の道路交通環境改善に関する連絡会」「東京都医療費助成」制度に関する連絡会」で双方が話し合い、公害地域再生の活動が続けられています。
1次判決 2002年10月29日 都庁前に1300人参加
1次判決 2002年10月29日 都庁前に1300人参加
トヨタ東京本社前で座り込み 2007年3月16日
トヨタ東京本社前で座り込み 2007年3月16日

写真は『東京大気汚染公害裁判全面解決報告集』より

<原告>

東京に居住または勤務して、気管支喘息・慢性気管支炎・肺気腫にかかった患者または遺族

訴訟名 提訴年月日 原告数
1次訴訟 1996年5月31日 102人
2次訴訟 1997年6月3日 110人
3次訴訟 1998年10月16日 115人
4次訴訟 2000年11月16日 191人
5次訴訟 2003年5月20日 75人
6次訴訟 2006年2月16日 40人
合計 633人

<被告>

ディーゼル
自動車メーカー
7社 トヨタ、日産、三菱、いすゞ、日野、日産ディーゼル、マツダ
道路
国、東京都、首都高速道路公団(現:首都高速道路株式会社)

<判決・和解>

2002年10月29日 判決(1次訴訟)
自動車メーカー
責任を問われるのを免れる
国・都・公団
道路管理責任が認められる
→国・公団・自動車メーカー・原告控訴(都は控訴せず、原告は都を控訴)
2007年8月8日 和解
・国が独立行政法人環境再生保全機構に指示して、公害健康被害予防基金から東京都が実施する予防事業に充てるために60億円を拠出させ、自動車メーカーが33億円、首都高速道路株式会社が5億円支払い、ぜん息患者の救済制度を創設する。
・国・都・公団(現:首都高速道路株式会社)は環境対策を実施する
・自動車メーカーは原告に解決金12億円を支払う
・国はPM2.5の環境基準設定を検討する

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