記録で見る大気汚染と裁判

西淀川大気汚染公害裁判

学校内調査資料

出来島小学校      

出来島小学校は、1970年度・1971年度に、大阪府・大阪市両教育委員会から「公害対策研究学校」の指定を受け、教職員は、児童に対する保健指導や、公害学習の指導方法を研究・実践しました。1年間の取り組みをまとめた紀要や、公害学習の指導計画が資料として残されています。

◆『昭和45年度公害対策研究指定校 研究発表紀要』(大阪市立出来島小学校、1971年)

1970年度の研究の取り組みが、図表やグラフ、文章でまとめられています。
大気汚染の児童に及ぼす影響とその対策として学校独自で大気汚染注意報(0.25ppm以上)・警報(0.4ppm以上)の基準を作り、警報時には、体育は講堂内・教室内で実施または中止、休憩時間は屋外に出させない等のルールを設けました。また、ぜん息児童の保護者を対象に健康相談を開いたり、「ぜん息日記」や「ぜんそくカルテ」を作ったりして、一人ひとりの症状の把握と改善に努めました。さらに、空気清浄機の設置やうがい施設の整備、酸素吸入器の設置など、施設面での対策も図られています。
保健指導の強化として毎月1回「健康週間」を設け、うがいの習慣化が奨励されています。また、体育や学校行事を通して、積極的に体力づくりが行われました。
公害教育への取り組みとして大気汚染に関する学習を、道徳、社会科、体育、児童活動、学校行事、学級指導などで実践しています。

◆『公開学習指導案』(大阪市立出来島小学校、1971年2月)

1971年2月に行われた公開学習の際に配布されたもので、公開された次の授業の指導案が掲載されています。
・5年生社会「空気のよごれと工業」
・5年生道徳「美しい町に」
・5年生保健「空気と健康」
・6年生保健「社会の健康」
・6年生学級会「うがいやかんぷまさつをしよう」
その他、体力づくりのための「出来島体操」、うがいの励行を促す「保健だより」等が掲載されています。

◆『昭和46年度公害対策研究学校 研究発表紀要』(大阪市立出来島小学校、1972年2月)

1971年度の研究の取り組みが、図表やグラフ、文章でまとめられています。
保健に関する指導として体育や学校行事での体力づくり、うがいを習慣化させるための月1回の「健康週間」の実施など、公害に対処する力を育成するための取り組みが紹介されています。
公害学習への取り組みとして社会科(2年生・3年生・5年生・6年生)、保健体育(6年生)、道徳(2年生・3年生・5年生)、学級指導(1年生・2年生・4年生)での公害学習の実践例が掲載されています。

◆『昭和46年度公害に関する学習指導計画―社会・体育(保健)・道徳―』
(大阪市立出来島小学校、1972年)

公害学習の実践記録として作成された冊子です。
全教職員が社会科・体育科(保健)・道徳に分かれて、出来島小学校独自の公害学習指導計画を作成しました。例えば
1年生の社会科では、「わたしたちのきょうしつ」(教室にある空気清浄機や開けられない窓に気づかせる)、「がっこうめぐり」(うがい薬や酸素吸入器、黄色の旗の日には運動場に出られないことに気づかせる)などが行われ、空気の汚れが自分たちの学びや遊びの場に与えている影響に気づかせようとしています。
参考資料としてアンケート調査「公害に対する本校児童の意識」の結果も掲載されています。4年生・5年生・6年生の
8割以上の児童が、自宅付近や学校付近の空気が「とてもわるい」「わるい」と感じていることが分かります。