
中皮腫患者の入院から在宅医療に向けては、家族への個別療養支援や、レスパイトケア(家族に対して施設などで被介護者を一時的に預かるサービス)を目的とした入院施設の確保が重要になってきます。
家族間で現状の症状や今後の見通しについて情報共有をしっかり行ない、医療者とのやりとりする人を決めます。
夫婦、子ども、親戚で誰ががんの在宅医療協力をしてくれるかを確認し、治療費などを含め治療方針や家族として大切にしたいことを共有し、家族の考えが優先的になるのではなく、がん患者さんの希望に沿ったものにします。ただし、それぞれの事情によって協力ができない場合や、在宅医療に否定的な考えを持っている場合もあります。話し相手になるなどといったわずかな助けでも構いませんので、知人・友人などを含めて在宅医療を支援してくれるかを確認します。
最初から住宅改修(階段や廊下の手すりなど)や福祉用具(購入・レンタル)など全てを準備する必要はありません。在宅を始めてみてから、必要に応じて準備して行けばよいです。
最近は胸膜中皮腫と診断された後、治療期から入院の期間は短く、外来での通院治療を行う事も多くなっています。また最期の時間を含め、できるだけ長く住み慣れた自宅での療養を選ぶ人が増えています。一方で、石綿関連肺がんや悪性胸膜中皮腫の場合、様々な治療や入院で、家族と過ごしたり、本人のしたいことをする大事な時間を失い、後で悔やまれる方が多いのも現状です。
大事な時間を家族と過ごしたり、住み慣れた家での時間を大切にしていくケアが、在宅ケアです。特に中皮腫患者の在宅医療に力を入れているクリニックでは、医師と看護師が平均週1回から必要時には毎日訪問し、治療とケアにあたります。電話での相談は24時間受け付け、夜間の訪問も行われます。免疫療法や他の通院で行う治療との併用も可能です。鎮痛剤の投与、酸素や吸入等の治療もご自宅で可能です。また、病院でこれ以上手の施しようがない状態になっている場合、「最後のときを自宅で迎えたい」と希望する末期がんの患者さんもいます。このような場合、治療という観点ではなく、痛みを和らげる緩和ケアが大切です。
しかし、このようなメリットを引き出すためには、患者さんやご家族が過ごしやすい環境を整えていく必要があります。最後まで家にいたい希望をかなえ、激しい痛みはなく、ご自宅で安らかに看取られる方が増えています。また、元々入院していた病院と連携し入院することや、最後はホスピスに入院する方もいます。
自宅で安心して療養できる環境を整えるためには、支援してくれる制度や施設などを活用することが必要です。在宅医療を始めるにあたって、家族以外の助けやベッドなどの介護用品が必要になり、また、それらを支援してくれる制度や専門スタッフや施設等の活用や環境の整備が重要になってきます。ここでは、それらの専門家や専門スタッフ、各施設や介護用品や環境整備まで含めたサービス、制度を紹介します。
なお、介護保険制度については、こちらをご覧ください。
現在、ここに挙げた施設・職種以外にも、できる限り住み慣れた地域で自分らしい生活が続けられるような支援サービスが充実してきています。まずは病院の相談窓ロや地域連携室、地域包括支援センターなどを活用して情報を集めてください。
地域包括支援センターは、地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とし、地域包括ケア実現に向けた中核的な機関として市町村が設置しています。
疾病を抱えても、自宅等の住み慣れた生活の場で療養し、自分らしい生活を続けるためには、地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供を行うことが必要です。
また、関係機関が連携し、多職種協働により在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築するためには、市町村が中心となって、地域の医師会等と緊密に連携しながら、地域の関係機関の連携体制の構築を図ることも重要になります。
厚生労働省・経済産業省・農林水産省は共同で、「地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集」(保険外サービス活用ガイドブック)を作成しました。取り上げられている事例のサービス内容は、見守り、食、買い物といった基本的な生活を支える分野に留まらず、旅行・外出や趣味など幅広い内容となっています。また、さまざまな地域において参考になるように、都市部以外の事例も含まれています。事例集は、厚生労働省の下記URLから閲覧可能です。