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COPDは全身の病気です~知っておきましょう、肺合併症と全身併存症のこと~④(全4回)
COPDの早期発見・早期治療+合併症・併存症予防の手立てでQOLを高めましょう!

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、肺だけでなく、全身の病気です。COPDで亡くなる患者さんの死因の多くは、合併症(COPDに伴って肺の中に起こってくる病気)や併存症(COPD患者さんに起こりやすい全身の病気)によるものとの報告もあります。COPD治療の第一線で活躍されている奈良県立医科大学呼吸器内科学講座の室 繁郎先生に「COPDと合併症・併存症」をテーマにお話を伺う連載の第4回。最終回は、COPDの早期発見・早期治療の重要性と、合併症・併存症予防の手立てについてご紹介します。

ポイント!

COPDの早期発見・早期治療は合併症・併存症のリスクを減らします!

室 繁郎 先生 奈良県立医科大学呼吸器内科学講座教授
室 繁郎 先生

COPDは息切れなどの症状を実感する頃にはかなり進行しています

少し古い調査結果ですが、日本におけるCOPD患者さんの有病率や患者数に関する大規模疫学調査(NICEスタディ2001年)によると、COPD患者数は530万人と推定されています。ところが、実際に病院でCOPDと診断された患者数は22万人(2017年厚生労働省患者調査)。単純計算で500万人以上ものCOPD患者さんが、診断を受けていない、あるいは自分がCOPDであることに気づいていない、ということになります。

これまで何度も申し上げてきたように、COPDは息が苦しい、ぜいぜいするといった肺の病気にとどまりません。心臓や脳、胃腸の病気、さまざまな臓器のがんなどとも関係する全身病なのです。自分がCOPDであることを知らずに治療を受けないまま日常生活を送っていると、いつかは重い合併症・併存症にかかってしまうかもしれません。そんなことにならないよう、まずはCOPDであるかどうか、下記URLにてセルフチェックをしてみましょう。5つの質問に答えることで、「疑いなし」「疑いあり」のどちらかの結果を確認することができます。

ぜん息・COPD相談室公式サイト(別ウィンドウを開きます)

COPDの特徴的な症状に「息切れ」がありますが、病気の初期には、無症状であることも少なくありません。実は息切れを実感する頃には、呼吸機能がかなり障害を受けていることが多いのです。そのため、たとえ無症状でも、10年以上の喫煙経験がある方は、すでに禁煙した方も含めて、年に1度はスパイロメーターという器具を用いた呼吸機能検査(スパイロ検査)を受診しましょう。

COPDの早期発見・早期治療は、合併症や併存症の予後を改善する可能性が十分あるといわれており、非常に大切なことなのです。

禁煙に加え、運動、食事、定期的な検査で合併症・併存症から身を守りましょう

本連載の最後に、COPDの悪化を防ぎ、合併症・併存症から身を守るための予防の手立てをご紹介します。

第一に、禁煙です。
禁煙の時期は早ければ早いほど良いでしょう。忘れてはいけないのが、受動喫煙もCOPDのリスクとなるので、患者さんご本人だけでなく、一緒にお住まいのご家族なども禁煙するようおすすめします。

また、できる範囲で体を動かすことです。座り続けたままほとんど体を動かさないことを「セデンタリー行動」と言いますが、セデンタリー行動はCOPDでなくても健康に良くないことが分かっています。座りっぱなしの人は、30分に1度立ち上がって5分くらい歩くだけでも、効果があると言われています。犬を飼っている人は、身体の活動性が高いという報告があります。たとえばお孫さんと、あるいはご近所の友人と、連れだって散歩をするのも良いでしょう。人それぞれライフスタイルは異なります。自分のスタイルに合ったかたちで、何らかの運動、あるいは体を動かすことを、継続してみましょう。

COPDの基礎知識とセルフマネジメント④ 運動療法(別ウィンドウを開きます)

食事も大切です。
COPD患者さんは、呼吸するときのエネルギー消費が大きく、体重が落ちてしまいがちです。重症のCOPD患者さんは医療機関で栄養指導が行われていると思いますが、軽症の患者さんは、筋肉量が落ちないよう、3回の食事をバランスよく食べ、筋肉のもととなるたんぱく質をしっかり摂取するように心がけましょう。ただし、胃・十二指腸潰瘍や、胃食道逆流症を合併することも多いですので、胃腸の調子が悪ければ、主治医にご相談ください。

COPDの栄養療法の詳細については、以下のコラムを参照してください。

COPDの栄養療法について考えよう①

COPDの栄養療法について考えよう②

もう一つ大切なことが、定期的な検査です。年に1度は定期健診で、心臓をはじめとする全身の状態をしっかりチェックしましょう。COPD患者さんは、呼吸機能検査に加えて、各種がん検診や骨密度検査も必須だと思います。また、低線量肺がんCT検査を、年に1回か、2年に1度は受けることも視野に入れましょう。検査によって合併症・併存症を早期に発見し、適切な治療に臨みましょう。

室 繁郎(むろ・しげお)先生

1989年京都大学医学部卒業。田附興風会北野病院内科研修医・医員、カナダマギル大学ミーキンス・クリスティー研究所研究員、京都大学医学部附属病院呼吸器内科准教授などを経て、2018年奈良県立医科大学呼吸器内科学講座教授に就任。現在に至る。医学博士(京都大学大学院医学研究科)。『喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き』(2018年)作成委員、『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版』(2022年)副委員長 。現在、日本呼吸器学会で、閉塞性肺疾患学術部会(COPD、喘息および気道系疾患に関する諸問題)の部会長を務めている。