ぜん息などの情報館

4-2 慢性閉塞性肺疾患の国際比較等に関する研究

常俊義三(宮崎県立看護大学客員教授)

研究の目的

近年、我が国だけでなく、世界各国で気管支喘息等のアレルギー疾患の増加を指摘する報告がみられ、増加をもたらした要因についての検討が行われている。

アレルギー疾患を含む呼吸器疾患の増加の要因については、大気汚染物質等の生活環境、生活様式、食生活を含む生活行動の変化を指摘する報告がみられるものの、具体的な因子は明らかにされていない。

我が国では大気汚染の人体影響が社会的に注目(1960年代)以後1970年代にかけて行われた慢性気管支炎の発症要因はSO2を主とした大気汚染濃度と喫煙習慣、年齢であることが明らかにされ、慢性気管支炎の有症率の地域差は大気汚染の濃度差、人口構成、喫煙習慣の差によって説明し得ることが既に明らかにされている。

しかし、大気汚染の質的変化、NO2による大気汚染が注目され影響評価の指標として検討の対象とした喘息、特に小児期の喘息は冒頭に述べたように世界各国でその増加が指摘されている。本研究は有症率、発症要因についての国際的な比較及び共同研究が発症の要因の解明及び予防対策を検討する上で不可欠なものと考え、主として1980年以後の国内外の文献を収集すると共に、現在各国で行われている野外調査の現状を把握し、同一手法を用いた調査を行い、有症率増加の要因、特に大気汚染との関連性を明らかにすることを目的に調査を行った。

3年間の研究成果

既存の文献による検討から、欧米諸国でも喘息有症率の経年的な増加がみられるが、その有症率は国により大きく異なって(0.6-46%)いることを明らかにした。

しかし、その調査方法(ISAAC)は、1980年以降我が国で広く行われてきた調査(ATS-DLD)と異なるため、調査方法の差による有症率の差等について検証し、両者の差異を明らかにした。我が国の有症率の経年的な変動については、1980年以降同一小学校を対象に経年的な調査が行われた調査資料を収集・解析を行い、大気汚染の高低にかかわらず有症率が低下傾向を示す学校、増加を示す学校がみられ、結果的には有症率の地域差が拡大する傾向にあることを明らかにした。

中国、ブラジルでの調査では、大気汚染の質的な差だけでなく大気汚染以外の要因(ブラジル:暖房・調理の燃料に薪を使用する家庭のほうがガス使用家庭より有症率が高いことなど)を明らかにした。

中国遼寧省の3都市の学童(17,000名)と保護者(30,000名)を対象にATS-DLDの標準質問票を用いて呼吸器症状の調査を行い、その有症率と大気汚染等との関連性について検討した。

学童の呼吸器症状については短期、長期(年3カ月以上)のせき、たん、喘鳴、喘息等の有症率について検討した結果、喘息を除く各症状の有症率は大気汚染の濃度が高い地域ほど高率(本渓>瀋陽市>大連>日本)、しかし学童期の喘息は低値であった事などを明らかにした。

このページの先頭へ