ぜん息などの情報館

2-4 思春期・成人の気管支ぜん息、慢性気管支炎、肺気腫の発症・変動因子に関する研究

代表者:大田 健

研究の目的

気管支喘息およびCOPDの発症にはいろいろの因子が想定され、基礎的な研究を通じてその検証が広く行われている。しかし、未だ決定的因子は明らかではない。
喘息やCOPDの発症機構あるいは発症に関与する因子を明らかにすることは、各疾患の発症を予防する方策を確立することを可能にするものである。本研究では、患者のQOLや予後の改善に必要な生活環境の整備や治療における標的を確定し、より良い生活指針と治療法の確立をするために、喘息の発症・変動因子を明らかにすることを目的とした。
特に平成13年度は発症・変動因子を明らかにするべく患者さんを対象とした質問表を作成し、調査を開始した。

13年度研究の対象及び方法

平成12年度に気管支喘息およびCOPDの発症・変動因子について文献的検索を疫学、臨床、基礎の各研究分野で実施した結果にもとづき、実際の症例について調査するため、既往歴、治療歴、生活歴、喫煙歴(受動を含む)等の小児期と思春期を意識した内容を含む質問表を各専門施設の合議で作成した。

質問表を各施設100部配布し、外来患者さんを対象に調査を開始した。このアンケート調査の目的を記し、情報を匿名化して使用することの同意を得た。同時に室内環境を調査する目的で、患者さんの家を掃除機で一週間掃除し、たまったゴミパックを回収した。
回収できた質問表を匿名化し、コンピューター入力し、統計的解析に用いた。

13年度研究成果

平成13年3月末現在400例について回収を終了した。まず入力できた総体では262人(男性149人、女性106人、不明7人)で年齢は58.0±19.0歳であった。そのうち、喘息の患者さんは176人で年齢は52.0±18.8歳であり、男性は77人(50.5±20.3歳)、女性は96人(53.1±17.5歳)であった。これはCOPDの平均年齢71.5歳と比較して明らかに若年であり、またCOPDでは約90%が男性であることと比較すれば女性の比率が多いことが示されている。

今回の調査では喫煙を含め発症変動因子について、喘息およびCOPD両者に共通の質問表を用いて調査した。質問数は多くなる傾向があったが、両者の差をより浮き彫りにできる質問表となった。発症因子として喫煙はCOPDと比較すれば明らかに喘息では低いことが今回の調査でも判明した。住環境、天候、ペットなどの関与について、どの程度関与しているかが明らかにできた。今後すべての入力をすませ、多変量解析を行い、実際の寄与度について明らかにしていく予定である。

同時に喘息ばかりでなく、COPDについても住環境の関与を明らかにする目的で家のゴミを回収した。家のゴミの中のダニ、ネコ、真菌アレルゲンの含有量を測定する予定であり、発症変動因子としての寄与度についてエビデンスを得ることが期待できる。周囲の環境因子の検討では住宅地が大多数であったが、その大気汚染物質の濃度(これは各自治体によるサーベイランスのデータを収集する)を加えて検討することで、今回の調査地域(喘息を主体とする東京、相模原、仙台、またCOPD調査を主体とする東京、札幌)の大気の疾患への寄与が解明できると思われる。

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