ぜん息などの情報館

3-4 地方公共団体における環境保健事業の効果的推進に関する研究

代表者:西牟田 敏之

研究の目的

小児気管支喘息の有病率はいまだに増加傾向にあり、そのほとんどは乳幼児期に発症している。健康診査事業における喘息発症リスク児のスクリーニング法はほぼ確立したが、その後どのようにして効率的な早期介入に結び付けて、発症率の低減を実現させられるかが重要な課題である。

一方、小児気管支喘息においては、的確な治療管理によって発作のコントロールがなされれば、約70%の症例を寛解に導入することが可能であり、早期治療介入と積極的な心身鍛練、環境整備そしてパートナーシップの構築が寛解率増加の鍵を握っている。

公健協会の健康診査、健康相談、機能訓練のソフト3事業の効果をさらに高めるために、それぞれの事業の目的を明確にし機構の見直しを図るとともに、各事業の関連性を活かした有機的連携の方法を検討することを目的としている。機能訓練事業に関しては、水泳訓練が継続できる自己鍛練法と、幼児の水泳訓練法を提示し、普及をはかることを目的としている。

13年度研究の対象及び方法

小課題1

喘息発症リスク児の相談事業

  1. 四街道市における10カ月(388人)及び1歳6カ月(498人)健診対象者から、喘息発症リスク児をスクリーニングし、事後指導後に個別相談を実施した。
  2. 川崎市の相談事業参加者のうち、「喘息・湿疹予防日記」の記載群70人と未記載群441人の1年後の気道症状、皮膚症状の経過を調査した。

既発症者の相談事業

  1. 大阪市の園児・学童・生徒29人に養護教諭により喘息日記、PEFモニタリング、日常生活指導を行い、記録の励行と症状経過を調査した。
  2. 佐倉保健所の思春期喘息相談に参加した22人の背景分析を行った。

小課題2

  1. 堺市では平成6年11月から7年12月に健診を受けた計6,295人の6歳時の喘息罹患率を質問紙により実施し73.5%の回答を得た。解析可能な4,317人につき検討した。
  2. 四街道市では1歳6カ月健診対象者の3歳時の追跡調査を行った。

小課題3

  1. 地方自治体で実施されている水泳訓練の実態調査
  2. 水泳訓練中の症状把握の客観的指標の検討
  3. 幼児期の喘息患者の水泳訓練と陸上訓練時の運動誘発喘息比較

13年度研究成果

小課題1(健康相談事業)

喘息発症リスク児の相談事業

  1. 四街道市の健診事後指導対象者は42.8%、指導(+)は14.1%、この中で個別相談した人は26.7%であった。ハイリスク児の3歳時点での喘息発症率は、気道症状(-)児から3.7%、気道症状(+)児からは28.6%であった。
  2. 川崎市の相談参加者で日記記載70人と、記載なし441人の1年後の症状経過は、前者で皮膚症状改善が顕著だったが、喘鳴出現は10%で差がなかった。
  3. 大阪市の保健指導対象者29人は、喘息児総数の19.7%に相当。指導によりPEFモニタリングが継続できるようになったのは55%であった。
  4. 佐倉保健所の相談参加者22名中、吸入ステロイド治療は32%。最近の症状経過から中等症、重症と判定した人は87%存在した。

小課題2(健康診査事業)

  1. 堺市の追跡調査4,317人の解析から、6歳時点の喘息は男7.6%、女4.7%で、堺市の基準でハイリスク群から7.4%、非ハイリスク群から3.5%だった。
  2. 現行の4カ月健診のハイリスク基準は感度は高いが特異度が低く、四街道市の気道症状を加えた1歳6カ月健診の基準は3歳での喘息発症をよく反映し感度、特異度ともに高かった。

小課題3

  1. プール環境設定は、水温29~32℃、残留塩素濃度0.8~1.0ppmが多かった。
  2. 水泳訓練による平均酸素飽和度は、未就学児で前98.2%、途中97.0%、後96.8%であり、就学児では98.2~97.6%の範囲であった。
  3. 陸上訓練(エアロビックリズム運動)は水泳訓練に比してトレーニング後のFEV1、V50が低値となるが、PEFでは有意差が認められなかった。
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