
代表者:大田健
本研究では、早期診断、早期治療が可能となるシステムを確立し、COPDについて従来にない発症予防の観点からの新しい包括的な地域保健・医療連携間の連携のアプローチを構築し、そのマニュアル作成を目的とした。
わが国の医療事情に適したCOPDの早期診断、早期および継続治療のための修正が必要である。そこで本研究は以下の項目につき研究を進めた。
現在、COPD患者の大多数は診療所で治療されているが非専門医はCOPDの新しい診断、治療法に習熟しておらず医療レベルは高くない。そのため患者の大病院志向が続いている。高齢のCOPDを長期にわたり管理していくためには重症度などに応じた地域での医療・保健連携を進めていく必要がある。また、患者と医療者が互いに協力し合ってケアの質を高める、いわゆるセルフマネージメントのあり方を確立していくことが必要である。本研究では、発症予備群の早期診断・早期治療が可能となるシステムを確立し、COPDについて従来にない発症予防の観点からの新しい包括的な地域保健・医療機関間の連携のアプローチを構築することを目的とする。
早期診断における11-Qの検討:長崎県松浦市、八丈島での集団検診で有効性を確認した。COPDの outcome調査の実施:急性増悪の回数と医療費を調査した。HRCTの研究:肺気腫、気道病変とQOLの関連につき調査した。栄養評価における筋肉量と肺気腫の重症度の関連性の調査した。 LINQを用いたセルフマネージメントを検討した。
COPDのプライマリケアにおける問題点が明確にされている。また、高齢者の在宅医療に関わるコメディカルスタッフの組織化に大きな意味を持ち、機構の目的に合致する研究であるという印象を持った。一方、因島で行われたアンケート調査対象者の中で呼吸器症状を有する人の数が多すぎることからアンケート調査の内容に問題があり、精度の高いスクリーニングが必要である。また、コストの問題があるがCOPDの診断にはできるだけHRCT(高分解能CT)を取り入れることが望ましい、基幹病院のない地域での連携モデルやぜん息と異なるものとしての判断基準が必要との意見があった。
起承転結のはっきりした研究成果であった。この結果を普及させる作業を期待する。学問的な意味においても、現実の実践においても大変優れた成果を挙げている。
有病率が長崎と八丈島で異なることの考察、高分解能CTとヘリカルCTとの評価の関連性の検討を行なう必要がある。
COPDの早期診断早期治療確立のためのシステムや各機関の連携については評価でき、研究が順調で成果が得られている。今後は、大気汚染があり医療システムがある程度進んでいる地域でも同様の効果が得られるかの検証と、マニュアルを用いて一般診療所等への啓蒙活動が発展することを望みたい。
2-3 高齢のCOPD患者の早期診断、早期治療による発症予防のための地域連携の進め方に関する研究