
代表者:森 晶夫
薬物療法の進歩により、近年の喘息診療水準は大いに向上したものの、AIR-J2005の結果等によると、十分な治療水準にある患者の割合は未だ相当に低いことが明らかになっている。現行の薬物治療の効果に限界のある重症・難治性喘息の症例に対しては、新たな治療法の模索が重要課題であるが、適切な治療が提供されれば十分にコントロールされるべき、本来は軽症ないし中等症に属する症例が、コントロール不良な喘息者の大部分を占めている現状からは、現行の治療オプションをいかに効果的に提供していくかも、解決すべき重要課題と考えられる。医療者側には、最も強力な喘息治療薬と位置づけられる吸入ステロイド薬の処方率を向上することが、患者側には、適正な吸入手技、服薬コンプライアンスの向上が求められる。本研究においては、医療者側と患者側を結ぶ吸入指導につき、病薬連携の視点から医師、薬剤師を対象に、マンパワー、指導時間、教材の使用、啓蒙活動の有無、保険点数の受け止められ方等につき調査した。この結果をもとに、限られた時間、人手の範囲内で、より効率的、効果的に吸入ステロイド薬の吸入手技、服薬指導を可能にする教材を作成し、配布する。さらに、その導入効果について、現場で検証することを目標とする。
病院、薬局における吸入指導の実態調査(医師、薬剤師を対象とする)を実施し、 現状の医薬分業体制における吸入ステロイド服薬指導の課題について解析する。その結果を踏まえて、薬剤師を対象とした吸入指導プログラムを開発する。
病院薬剤師に加えて、チェーン、個人等種々の経営形態の薬局に勤務する薬剤師420名を対象に、吸入ステロイド薬の吸入指導の現状について調査を実施、結果を解析した。医師40名についても外来診療における吸入指導について調査を実施、結果を解析した。吸入ステロイド処方箋に対応する現場の薬剤師向けに、成人喘息患者、小児喘息患者それぞれに対応した吸入指導実践プログラムを作成した。