
代表者:一ノ瀬 正和
COPDは、喫煙を原因とする慢性呼吸器疾患であり、患者数と医療費の膨張は社会的な重荷となっている。COPD患者において適切な運動レベルを評価し指導することは容易ではないが、これはひとつには、日常生活活動性の評価法が確立していないことに起因する。本調査研究では、2種の三軸加速度計を用い、COPD患者に対する活動性評価法確立を行う。さらに、COPD患者活動性の実態調査、COPD患者の運動耐容能の調査研究に加え、活動性向上ならびに活動性維持を目指した運動療法の検討を行う。これにより、COPD患者の日常活動性の制限状態、および医療介入による改善効果の定量的評価が可能となり、活動性向上と維持効果のある具体的方法が、COPD患者の機能回復、増悪予防の有益な手法になりうると考えられる。
日本人COPD患者に対する活動性評価法確立のために、1)日本人に対するDynaPortの信頼性検討、2)DynaPortによる活動性規定因子検討、3)ActimarkerのCOPD患者に対する信頼性検討を行う。また、4)Actimarkerを用いたCOPD患者活動性の実態調査、ならびに、5)COPD患者の運動耐容能の調査研究を行う。さらに、活動性向上及び維持をもたらしうる具体的方法を構築するために、6)活動性向上を目指した運動療法の検討、7)活動性維持を目指した運動療法の検討をおこなう。
DynaPortは、日本人に対し再現性、反復性をもって有用であることが判明し、DynaPortによる日常活動性は、運動耐容能、呼吸筋力、下肢筋力、気流制限の強さよりむしろ%TLCや%DLCO/VAをより鋭敏に反映し、BMIも反映していた。より簡易なActimarkerも信頼性をもって使用可能であることが確認された。COPD患者に対するActimarkerを用いた活動性は、社会的、天候的要素が影響を受け易く、活動時間の抽出方法により活動性の異なる側面を抽出する可能性が考えられた。6分間歩行距離は、COPD患者では健常高齢者に比し有意に低下し、COPDの病期やQOLが影響した。COPD患者の歩行に関する調査から、活動性の向上のためには、最適歩行速度とその意義を考慮した運動療法の指導が重要であると考えられた。活動性維持のためのフライングディスクのアキュラシー競技は、呼吸器疾患患者に対し導入は十分可能で、実際、健常者と同様競技を楽しめており、技術的な向上意欲や競技内容の自己分析等も行われており、継続性が期待できる運動療法と考えられた。