
代表者: 滝澤 始(杏林大学)
本調査研究では、ぜん息患者、慢性咳などの呼吸器症状とアレルギー素因を示しながらも未だぜん息の典型的表現型を示さない患者、および健常人を対象に、抗酸化酵素群の遺伝子多型の同定、抗酸化活性を含むEBC中バイオマーカーの測定による気道炎症病態の解析を行い、ぜん息の発症・増悪との関連性を検討し、これらに大気汚染がどう影響するかを検討する。
ぜん息群においては、EBC中の各分子マーカーがその増悪に伴いどう変動するかを検討し、さらに大気汚染レベルがどう関与するかを調べ、気道抗酸化活性レベルや抗酸化酵素遺伝子多型による影響も検討する。ぜん息未発症群では、その臨床経過、特にぜん息発症と大気汚染レベルとの関連性を検討し、気道抗酸化活性レベルや抗酸化酵素遺伝子多型による影響も検討する。
ぜん息患者、慢性咳などの呼吸器症状とアレルギー素因を示しながらも未だぜん息の典型的表現型を示さない患者、および健常人を対象に、以下の調査及び解析を行う。
平成24年度に引き続き、ぜん息患者、慢性咳などの呼吸器症状とアレルギー素因を示しながらも未だぜん息の典型的表現型を示さない患者、および健常人を対象に、以下の調査及び解析を行う。
対象者において EBC中酸化ストレス、抗酸化能の測定を行い、また同時に抗酸化酵素GSTP-1の遺伝子多型の同定が確立できた。未だ実施症例数が少なく、EBC酸化ストレスマーカーが非ぜん息群に比べ有意に上昇していたが、ぜん息の臨床像との相関は認められなかった。一方、EBC pHは喘息の一部の臨床像と相関した。さらに、公開されている各種大気汚染状況との関連性も一部検討したが、PM10との検討では有意な相関は認めなかった。代表的な抗酸化酵素GSTP-1の遺伝子多型を同定できた。
気管支ぜん息患者における臨床病態と幹線道路までの距離に関して有意な相関は認められなかったが、重症のぜん息患者は全員が幹線道路から200m未満に居住していた。また幹線道路からの距離は、%FEV1、FEV1/FVCと統計的に有意な正の相関を認めた。
EBCのH2O2濃度は呼気NOと有意な正の相関を認めた。EBCのH2O2はNO2の前月値と有意な相関を認めた。一方、EBC中酸化ストレスマーカーはPM2.5濃度とは有意な相関は認めなかった。GSTP1多型の解析ではAAホモ群では、幹線道路からの距離とFEV1/FVCや、EBC中H2O2とNO2の前月値との相関を認めたが、AG型では有意な相関を認めなかった。