すこやかライフNo.45 2015年3月発行
テレビや雑誌でおなじみの料理研究家、コウケンテツさん。小さいころはからだが弱く、ぜん息発作に悩まされていたのだそうです。
お母さんが「食」で支えてくれた小学生のときの思い出や、ご自身が父親になってから気づいたことなどを話してくれました。
「4人兄弟の末っ子で、自由にのびのびと育ててもらいましたが、なぜかぼく一人、からだがとても弱かったので、心配もかけたと思います。季節の変わり目には必ずといっていいほど体調を崩し、幼稚園には半分も行けませんでした。扁桃腺が腫れ、気管支炎になり、重症化して肺炎というパターンでしたね。そんなある日、かかりつけのお医者さんに『こらあかんわ、入院や』と言われて」
大変なショックを受け、ボロボロ泣いたことを覚えているという。その後も入退院をくり返した。そして旅行から帰った小学3年生のある晩、はじめてぜん息発作を経験した。
「夜中に苦しくて目覚めたら、息ができないんです。母親を起こして『息ができへん』と。病院に行ったら、即入院。その日から、ぜん息との付き合いが始まりました」
「発作は苦しくてとてもつらかったから、気持ちも落ち込みました。一方で大阪の気質なのかもしれませんが、ぜん息を笑いのネタにしてしまう部分もありました。冗談めかして『発作が……』と言って、友だちの笑いを誘ったり、吸入器を持ち歩いているぼくって特別、なんて思ったりして、楽しみながら付き合っていたように思います」
小学校高学年になると、ぜん息発作が少なくなり、6年生のとき、主治医に「もう通院しなくて大丈夫」と言われた。以来、発作は一度もない。
「ぜん息発作が起こらなくなったのと時を同じくして、かぜもひかなくなり、からだが丈夫になったことを実感しました。今思えば、母の食事のおかげだなと」
コウさんのお母さんは料理研究家の李映林(り えいりん)さん。「食」を大事にする生活を送っていたというコウさんの家族は日曜日の朝、みんなでキッチンに集まって、ワイワイと食事を作るのが恒例だった。「子どものころの思い出といえば、"ぜん息"と"たのしいごはんの時間"」とコウさん。
「母はぼくに何を食べさせたら元気になるかを常に考えてくれていました。ぜん息発作で苦しいときは、スープやおかゆ。そして、ここぞというときは必ずサムゲタン。今でも食べたら元気になるメニューです」
子どもの毎日の食事を作るうえでのアドバイスをもらった。
「手づくりの料理が健康によいとわかっていても、毎日は難しいですよね。便利な加工食品も上手に取り入れつつ、週1回などご自分のペースで定期的に手づくりの日を決めてがんばってみてはいかがでしょうか。レパートリーはそんなに多くなくていいのです。旬の食材をちょっと取り入れるだけでぐっと栄養価が上がります」
季節の移ろいを感じることができる旬の食材。春なら菜の花やアスパラなど苦みがある春野菜がおすすめだとか。
子育てまっ最中のコウさんは、ぜん息児のパパでもある。子どものケアについても話してくれた。
「あわただしい日々、子どもの世話も流れ作業的になりがちですが、様子をよくみて、状態の変化に気づくことが大事だと思います。ぼくも毎日、子どもの体温と呼吸の状態はチェックしています。平常時・ちょっとしんどいとき・一番しんどいときの呼吸のしかたを知っておけば、重症化する前に対応できます。『この病気は、いつまで続くのだろう』と思うこともありますよね。でも治療法はどんどん進歩しているので、明るい気持ちでお子さんに接していただければと思います」
ぼくも子(こ)どものころ、ぜん息(そく)でつらい思(おも)いをしました。でも大丈夫(だいじょうぶ) 。毎日(まいにち)ちゃんとごはんを食(た)べて、しっかり治 療(ちりょう)すればきっと治(なお)ります。ぜん息(そく)でつらい思(おも)いをしたみんなは、人(ひと)の痛(いた)みのわかる素敵(すてき)な大人(おとな)になれると思(おも)います。気楽(きらく)にやっていきましょうね。
45号の「ぜん息児へのエール」コーナーにご登場いただいた、料理研究家/コウケンテツさんのメッセージ入りサイン色紙をアンケートにお答えいただいた方の中から抽選で10名の方にプレゼントさせていただきます。ふるってご応募ください。(冊子のとじこみハガキでもご応募いただけます。)
<応募締切は2015年6月18日>