すこやかライフNo.46 2015年9月発行
神戸市ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)対策として、病気の認知度向上を目的とした「COPD健康相談事業」を実施してきましたが、今年度から「COPDスクリーニング及び禁煙サポート事業」を新たに始めました。
この事業は、「COPD高リスク世代」である団塊の世代を主な対象に、COPDを早期発見・治療し、健康寿命の延伸を目指すものです。今回はこうした神戸市の取り組みをご紹介します。
イベントでの肺年齢測定のようす
2次スクリーニング(COPD検査)での肺機能検査のようす
2013年度に始まった「COPD健康相談事業」は、COPDの認知度向上を主な目的としています。
各種イベント会場などにブースを設置、来場者に質問票に答えてもらい、オートスパイロメータで肺年齢を測定します。質問票では、「COPDという病気を知っているか」に加え、喫煙歴、年齢、性別、身長、体重などを聞き、喫煙歴があり、測定の結果、COPDの診断基準である「1秒率70%未満」の人には、簡単な禁煙指導や医療機関への受診勧奨も行います。
昨年度までの質問票の集計から、COPDを「よく知っている」「聞いたことがある」とした回答(=認知度)は、回答数全体の45%にとどまりました。保健福祉局健康部健康づくり支援課保健事業係長の西山順子さんは、「健康日本21(第二次)の目標が80%注であることを考えると、まだまだ周知・啓発する必要があります」と語ります。この事業ではそのほか、COPDの疑いのある人の割合が測定者全体の13・5%であること、喫煙歴がある人は、無い人に比べ、肺年齢が高い傾向にあることなども判明しました。
一方、「COPDスクリーニング事業」は、潜在患者さんを早期に発見し治療につなげていくことを目的に、今年度から始まったものです。
事業は、いわゆる団塊の世代を主な対象として想定しています。団塊の世代が働き盛りだった昭和50年代には、成人男性の喫煙率が80%以上でした。そのためCOPDの発症リスクが非常に高い世代でもあります。COPD検査と禁煙サポートを組み合わせ、効果的なたばこ対策を実現することで、この世代の潜在患者さんを早期に発見し治療できれば、重症化の予防と健康寿命の延伸、そして医療費や介護費用の伸び抑制も期待できます。
2次スクリーニング(COPD検査)では、「喫煙あり」と回答した方を対象に、1人当たり約20分かけて禁煙サポートも実施(下記参照)
スクリーニングの流れは下記のとおり。1次スクリーニングは、胸部X線健診の問診票で実施します。胸部X線健診は、団塊の世代と重なる60歳以上の国保加入者が受診者の大半を占めること、神戸市の場合、集団での特定健診と同じ日時・会場で胸部X線健診を無料で受診できるため、受診率が高いこと(特定健診受診者の9割が受診)が、その理由です。
胸部X線健診の問診票は、COPDのリスクチェックのため、せきやたんの有無など従来の質問に、息切れの有無を加えました。この問診票からハイリスク者を選び出し2次スクリーニング(COPD検査)の対象者を決めます。
COPD検査では、スパイロメータによる肺機能検査を実施し、1秒率70%未満の人には、医療機関への受診を勧奨します。
また、受診勧奨を行うに当たっては、神戸市医師会の協力で、COPDの治療ができる医療機関と、保険診療による禁煙サポートができる医療機関の情報を提供してもらっています。同医師会では併せて、かかりつけ医に対するCOPDの研修も独自に実施しているとのことです。
この4月から6月までの実績では、胸部X線健診受診者・約8900人の17%程度に当たる1496人が1次スクリーニングで抽出され、うち218人が2次のCOPD検査を希望。またその大半が60歳以上の男性です。
対象者の禁煙成功率や医療機関への受診率といった、事業の成果が出るのはこれからです。健康づくり支援課課長の前田宗彦さんは、「今年度の事業評価をもとに、より良い方策を模索していきたい」と語ります。医療機関と手を携えながらCOPD対策に乗り出した神戸市の今後が注目されます。
健康づくり支援課のみなさん
10万人弱と推測される、市内のCOPD潜在患者さんの掘り起こしに、知恵を絞っています。