WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

小児すこやかライフNo.48 2016年9月発行

地方公共団体事業レポート

愛知県名古屋市 小学生ぜん息教室 セルフケア、アドヒアランスの向上を目指した新たな試み

名古屋市では、ぜん息児のセルフケアおよびアドヒアランス(患者さん自身が積極的に治療に参加すること)の向上を目的として、ぜん息児とその保護者を対象とした「小学生ぜん息教室」を行っています。年4回の連続講座として開催されるこの教室では、医師だけでなく小児アレルギーエデュケーター(Pediatric Allergy Educator: 以下PAE)の看護師、薬剤師等やNPO 法人など多職種が関わり、レクリエーションの要素も取り入れた、楽しみながら学べるプログラムが実施されます。

今回は、7月3日に名古屋国際センター(名古屋市中村区)で行われた1回目の様子をレポートします。

写真1
医師による呼気NO(一酸化窒素)測定検査の様子

写真2
ぜん息講座の様子

写真3
医師や看護師、薬剤師等のPAEによる個別相談会

写真4
個別相談に応じる藤田保健衛生大学
坂文種報徳會病院小児科 教授 近藤康人先生

医師だけでなくPAEの看護師、薬剤師等多職種が関わる教室

名古屋市ではこれまで、ぜん息児を対象とした3泊4日の「ぜん息キャンプ」を行ってきましたが、昨年度から、ぜん息児だけでなく保護者にもぜん息の知識を深め、子どものセルフケア継続をサポートし、アドヒアランスの向上につなげてもらうという目的で、年4回の「小学生ぜん息教室」を開催しています。

1回目の教室には13組の親子が参加。午前中は保護者に向けた医師、薬剤師によるぜん息の基礎知識に関する講話と、子どもたちに向けた気管支のモデルや肺の模型を用いたPAEからのぜん息講座が行われました。子どもたちは、ぜん息のしくみや発作時の対応、学校生活で気をつけることなどに熱心に耳を傾け、手をあげて発言するなど、積極的に参加していました。

午後は、医師による呼気NO(一酸化窒素)測定検査、臨床検査技師による肺機能測定が行われ、結果説明とともに個別相談会が実施されました。参加者は、現在の子どものぜん息のコントロール状態や普段疑問に思っていることなどを熱心に相談していました。その後、子どもたちはPAEと「ぜん息すごろく」で遊びながらぜん息について学び、保護者は、2つのグループに分かれての交流会を行いました。

写真5
保護者向けぜん息講話を行う藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院小児科 岡本薫先生

PAEとは

PAEとは、アレルギーの診療や患者教育について専門的な知識・技術をもつ看護師、薬剤師、管理栄養士のことで、日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会が認定する資格です。教室にPAEが参加することで、子どもたちへの指導や保護者からの相談も、より的確なものになるといえます。

交流会で日ごろの疑問を解消同じ悩みを相談できる安心感

交流会には、医師とPAEが参加。保護者からの医学的な質問については医師が、服薬については薬剤師が、日常生活における自己管理の悩みなどについては看護師が分担して回答しました。また、ファシリテーターとして名古屋市から委託されたNPO法人アレルギー支援ネットワークのメンバーが参加しました。

名古屋市環境局地域環境対策部公害保健課主査松岡まり子さんは「一方的に医師の講義を聞いたり、個別相談をしたりするだけの会にはしたくなかったのです。保護者自身がいろいろな人の話を聞いて自分で考えて判断をしてほしい、という理由から保護者交流会を教室の柱として企画しました。そのためには、患者の目線に近い方をファシリテーターにする必要があると考えて、NPO法人アレルギー支援ネットワークに協力をお願いしました」と語ります。

その考えのとおり、参加した保護者からは、主治医にはなかなか相談できない日常生活のちょっとした悩みも相談することができ勉強になった、ぜん息のある子どもの保護者同士、同じ目線で交流ができた、先輩ママからのアドバイスが聞けてよかったなどの声が聞かれました。

写真6
2つのグループに分かれての保護者交流会。活発な意見交換が行われた

地域に根付いたぜん息診療の底上げを大目標に

年間4回の教室を通じて、子どもたちにはセルフケアの習得を、保護者には標準的な治療について知ってもらい、主治医と対等の立場で子どものぜん息と向き合ってもらうことが目標である今回のぜん息教室ですが、まだまだ課題も多いといいます。

「このようなぜん息教室に参加してくれるのは、意識の高い保護者の方が多いと思います。まだまだ、支援を必要とするぜん息児は地域にたくさんいると思うのですが、そうした子どもたちをどうフォローするかが今後の課題です。小学校の養護教諭や主治医、医師会などとの連携も模索しており、名古屋市全体でのぜん息診療、アレルギー診療の底上げに寄与できるような事業にしていきたいと考えています」(松岡さん)

教室が終わってもセルフケアを継続できるような内容にすべく、計画を練り直しながら、残り3回を行っていく予定とのことです。

写真7
名古屋市環境局地域環境対策部 公害保健課 課長 浅井隆行さん(右) 主査 松岡まり子さん

平成28年度 小学生ぜん息教室 スケジュール

第1回
(7月3日)
第2回
(8月11日)
第3回
(10月1日)
第4回
(12月11日)
対象者 小学生 保護者 小学生 保護者 小学生 保護者 小学生 保護者
9時     受付、問診  
9時30分 9時30分開始
受付・オリエンテーション
受付、問診・肺機能測定等・個別相談、オリエンテーション バス移動(レク) 交流会 受付
問診・肺機能測定等
個別相談
オリエンテーション
10時
10時30分 10時30分開始
ぜん息講座
ぜん息
講話
レクリエーション ぜん息
講話
オリエンテーション
レクリエーション
(あいち健康プラザで実施)
11時 11時開始
ぜん息講座
交流会
11時30分
12時 昼食 昼食 昼食
肺機能測定等
吸入指導
(あいち健康プラザで実施)
昼食
12時30分
12時45分開始
呼気NO測定
肺機能測定
個別相談
13時 13時開始
グループワーク
交流会 保健指導
グループワーク
ぜん息
講話
13時30分
13時45分開始
グループワークレクリエーション
(あいち健康プラザで実施)
14時 発表・修了式
14時15分開始
ぜん息すごろく
交流会
14時30分 14時30分開始
児童発表
15時 バス移動(レク)
→解散
15時15分から15時30分
全体まとめ
個別相談(希望者)
 
 

保護者対象   あいち健康プラザで実施


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