3-2-5 成人を対象とした気管支喘息患者に対する効果的な保健指導の実践に関する調査研究
代表者:大田 健
研究の概要・目的
患者教育用のテキストを用いて、患者の教育を実行し、ぜん息の病態と長期管理の必要性、吸入療法の利点と弱点、吸入ステロイドの安全性、ぜん息発作時の対応などの理解を促す。また、長期管理の効果を呼吸機能(ピークフロー、1秒量)、FeNO、GINAのコントロール評価、ぜん息コントロールテスト(ACT)などにより評価し、ぜん息患者の病型、年齢階層、重症度などからの層別解析を行う。
年度ごとの研究目標(計画)
平成21年度
- ぜん息患者に「ぜん息テキスト」を用いて保健指導を実行する。
- 指導効果をFeNOという新たな指標も取り入れ評価する。
- 対象患者の病型、年齢階層、重症度等による層別解析により、効率的な保健指導の確立を目指す。
- 自己管理に有用な自己評価の新しい指標としてGINAガイドラインに沿ったコントロールの評価を検証する。
平成22年度
- 喘息患者に「ぜん息テキスト」を用いて引き続き保健指導を実行する。
- FeNOによる指導効果の評価を検証する。
- 対象患者の背景因子を考慮した層別解析により、効率的な保健指導の確立を目指す。
- 「ぜん息テキスト」の内容を研究成果とJGL2009の内容を踏まえて改訂する。
- 自己管理に有用な自己評価の新しい指標として、JGL2009とGINA2006に沿ったコントロール評価を検証する。
3年間の研究成果
平成21年度
- 各施設において倫理委員会で審査を受け、患者への保健指導・調査が開始されたところである。多施設(6施設)共同研究により、全体として症例数300人を目標に指導を鋭意進めた。
- ぜん息コントロールテスト(Asthma control test, ACT)でコントロール良好と判定された症例のうち、約60%の症例で閉塞性障害ないし気道炎症が認められた。
- 今回得られた変換式を用いることで、今後決定されるぜん息診断やコントロールの目安となるFeNO値を、異なるFeNO測定機器を用いる施設でも応用可能となっている。
- ぜん息患者でしばしば合併が見られる胃食道逆流現象(以下GERDとする)については、症状の増悪時にぜん息・GERDいずれの症状に伴う症状悪化か鑑別が困難なことがある。
- 新たな非侵襲的検査手法である呼気凝縮液(EBC)が含有する脂質メディエーターは、喘息気道炎症の指標として測定可能である。
平成22年度
- これまでに、様々な背景因子の喘息患者90例を対象に解析し、保健指導の効果を認めているが、男性、高齢、花粉症なしの各群でACTの改善が少ない傾向を示した。
- JGL2009の基準でコントロール良好は30%余りであり、十分な治療の普及が必要である。呼吸機能障害有りで、FeNOが40ppb以上ではICSの増量が呼吸機能の正常化をもたらした。
- 喘息未治療時FeNOは、iNOS遺伝子プロモーター領域(CCTTT)繰り返し配列数と関連している可能性が示唆された。
- GERD保有群は女性に多く、非保有群に比べ有意に喘息コントロールが悪い結果を示した。
- 若年者で季節の天候(季侯)の影響は大きく、軽症患者は “秋の冷え込みの時期”、中等症以上の患者は“秋の冷え込みの時期”に加え“寒い時期”や“梅雨”に悪化した。
- 誘発喀痰で好中球優位な患者では保健指導の効果が細胞レベルに反映されなかった。
- 指導に必須の「ぜん息テキスト」を研究成果とJGL2009の内容を踏まえて改訂した。
評価結果
平成21年度
平成21年度評価結果(PDF:91KB)
平成22年度
平成22年度評価結果(PDF:36KB)
平成23年度
平成23年度評価結果(PDF:113KB)