ぜん息などの情報館

1-1-3. ぜん息患者の増悪及び未発症成人の発症の予測のための気道バイオマーカーの確立とその大気汚染物質の影響評価への応用に関する調査研究

代表者: 滝澤 始(杏林大学)

研究の概要・目的

本調査研究では、ぜん息患者、慢性咳などの呼吸器症状とアレルギー素因を示しながらも未だぜん息の典型的表現型を示さない患者、および健常人を対象に、抗酸化酵素群の遺伝子多型の同定、抗酸化活性を含むEBC中バイオマーカーの測定による気道炎症病態の解析を行い、ぜん息の発症・増悪との関連性を検討し、これらに大気汚染がどう影響するかを検討する。
ぜん息群においては、EBC中の各分子マーカーがその増悪に伴いどう変動するかを検討し、さらに大気汚染レベルがどう関与するかを調べ、気道抗酸化活性レベルや抗酸化酵素遺伝子多型による影響も検討する。ぜん息未発症群では、その臨床経過、特にぜん息発症と大気汚染レベルとの関連性を検討し、気道抗酸化活性レベルや抗酸化酵素遺伝子多型による影響も検討する。

年度ごとの研究目標(計画)

平成24年度

ぜん息患者、慢性咳などの呼吸器症状とアレルギー素因を示しながらも未だぜん息の典型的表現型を示さない患者、および健常人を対象に、以下の調査及び解析を行う。

  • 必要な問診、臨床検査、呼気一酸化窒素濃度測定に加え、抗酸化酵素群の遺伝子多型の同定と呼気凝縮液を採取する。
  • 増悪およびぜん息発症イベントを経時的に調査する。
  • EBCはR-tubeにより安静自発呼吸下5分間で採取し、抗酸化活性を含むEBC中の分子マーカーを経時的に測定する。
  • 大気汚染データを経時的に収集する。
  • 各群における分子マーカーの比較、それぞれの種々の内的外的要因との関連に加え、公開されている地域別大気汚染データや幹線道路からの距離と各マーカーの関連を統計学的に解析する。

平成25年度

平成24年度に引き続き、ぜん息患者、慢性咳などの呼吸器症状とアレルギー素因を示しながらも未だぜん息の典型的表現型を示さない患者、および健常人を対象に、以下の調査及び解析を行う。

  • 前年度同様、問診、臨床検査、呼気一酸化窒素濃度測定に加え、呼気凝縮液を採取する。
  • ぜん息患者においては増悪イベントとその誘因、気道バイオマーカーとの関連を調査する。
  • ぜん息未発症群ではとくにぜん鳴、呼吸困難、ピークフローや呼吸機能の低下を計測する。

2年間の研究成果

平成24年度

対象者において EBC中酸化ストレス、抗酸化能の測定を行い、また同時に抗酸化酵素GSTP-1の遺伝子多型の同定が確立できた。未だ実施症例数が少なく、EBC酸化ストレスマーカーが非ぜん息群に比べ有意に上昇していたが、ぜん息の臨床像との相関は認められなかった。一方、EBC pHは喘息の一部の臨床像と相関した。さらに、公開されている各種大気汚染状況との関連性も一部検討したが、PM10との検討では有意な相関は認めなかった。代表的な抗酸化酵素GSTP-1の遺伝子多型を同定できた。

平成25年度

気管支ぜん息患者における臨床病態と幹線道路までの距離に関して有意な相関は認められなかったが、重症のぜん息患者は全員が幹線道路から200m未満に居住していた。また幹線道路からの距離は、%FEV1、FEV1/FVCと統計的に有意な正の相関を認めた。
EBCのH2O2濃度は呼気NOと有意な正の相関を認めた。EBCのH2O2はNO2の前月値と有意な相関を認めた。一方、EBC中酸化ストレスマーカーはPM2.5濃度とは有意な相関は認めなかった。GSTP1多型の解析ではAAホモ群では、幹線道路からの距離とFEV1/FVCや、EBC中H2O2とNO2の前月値との相関を認めたが、AG型では有意な相関を認めなかった。

評価結果

平成24年度

平成24年度評価結果(PDF:84KB)

平成25年度

平成25年度評価結果(PDF:91KB)

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