大気環境の情報館

高活性炭素繊維を用いた沿道排ガス削減技術に関する調査

福岡県


研究の概要・目的

近年、建物が密集した交通量の多い交差点付近や高速道路が立体交差した地域など、自動車排出ガスが滞留しやすい地域において,自動車排出ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)、浮遊粒子状物質(SPM)が非常に高濃度となりやすいことが問題となっている。この問題を解決するため,道路構造対策や交通量対策等の局地汚染対策と併せ,滞留した汚染空気を浄化する技術の早急な確立が求められている。

本調査においては、高活性炭素繊維(ACF)を用いた大気浄化技術の可能性を検証し、大気汚染対策に資することを目的とする。

研究期間

平成12年度~16年度(5年間)

平成16年度の研究目標

  1. 実証化に向けたフィールド実験
    板状スリット構造ACFを含む小型の実証システムを製作し、自動車、地下駐車場等に設置し、周辺の汚染空気の浄化効率をモニタリングし、実証システムのスリット幅と通風速度、NOx浄化率との関係等について検証する。また、同小型システムを環境大気下に設置し、ACF通過前後のNOx除去効率を評価し、形状と浄化率との関係、自然通風によるACFへの通風量等について測定する。
  2. ACFを用いたパッシブ及びアクティブな沿道大気汚染除去装置のシミュレーションによる性能評価
    自然通風型(遮音)壁を道路端に設置し、その内部にACFを装着し、通風壁内を汚染大気が通過することにより、どの程度NOxが除去できるかを、ACF装着の自然通風壁を設置することによる通風特性等についてシミュレーションを行う。また、各種の道路構造(重構造道路、平面道路、掘割式道路等)と通風特性の制御等による最適なフェンスについてシミュレーションを行う。
  3. 強制採気による除去効果
    自然通風が見込めない閉鎖的箇所のNOx濃度軽減について、ACFを装着した装置内に強制的に汚染大気を吸収した場合の除去効率を実証する。また、吸引ポンプを作動させることによって生じる風流を含めたACF装置のNOx除去効果を評価する。

平成16年度研究目標に対する成果

  1. NOの浄化能力は採気空気とACFの接触時間、温度、湿度の影響を受けやすいことが分かった。温度が低い冬季は、夏季と比べてNOからNO2への酸化反応がゆっくりと進むためと考えられた。しかし、その浄化の低下は数パーセント以内であった。一方、NO2は接触時間、温度、湿度の影響を殆ど受けず高い浄化能が観察された。以上のことから、ACFは1年間を通してNOxに対して高い浄化能力をもっていることが分かった。
  2. ACFは室温付近の温度でNOx以外に、大気中のベンゼン、キシレン類等の揮発性有害化学物質類、二酸化硫黄(SO2)、アンモニア(NH3)、悪臭物質等についても同時浄化が可能であった。この時、オゾン発生装置や光照射等は必要ではなく、ACF単独で大気浄化に機能できることが分かった。
  3. 自然通風型フェンスを道路端に設置し、その一部をACFに代替えする方法について検討した。自動車搭載型で試験した結果,自動車走行に伴う風、あるいは自然風でも、NO、NO2は同時に効率よく浄化できることが分かった。
    以上の結果から、ポンプによりACFに汚染空気を採気する強制採気型及び自然風により大気を浄化する自然通風型の何れの方式についても実用化の目処が付いた。
  4. 自然通風型フェンスについてシミュレーションを行なった。フェンスの約95%をACFに置き換え、そのフェンスに汚染物質を含む自然風が通過することで、どの程度のNOxが除去できるかについて検討した。その結果、道路両端のフェンスを繊維状ACF充填の通風壁とした場合、沿道周辺の環境大気のNOx濃度を(a)平面道路ならばACF厚みが5cmの時、約20%、ACF厚みが10cmの時、約50%削減、削減できることが示唆された。一方、二階建て道路ならACF厚みが5cmの時、約40%~ACF厚みが10cmの時、約60%削減できることが分かった。
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