大気環境の情報館

移動発生源からの大気汚染物質の発生状況

大気汚染物質の発生源のうち、発生場所が移動するものを移動発生源といい、自動車、船舶、航空機等がこれに当たります。

近年自動車による物流、人流などモータリゼーションによる輸送の高速化、迅速化により、大都市地域で自動車排出ガスによる大気汚染が社会問題となってきました。自動車が排出するガスは、内燃機関(ガソリンおよびディーゼルエンジン)の排気行程で排出される排気ガス、圧縮行程でシリンダーの間隙から漏れるガス(ブローバイガス)および燃料供給系統からの燃料蒸気の漏れの三種類があります。大気汚染防止法では、自動車排出ガスとして、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、鉛(Pb)化合物、窒素酸化物(NOx)粒子状物質(PM)の5物質を指定しています。(鉛化合物については規制値は定められていません。)

「自動車排出ガス原単位及び総量算定検討調査」(環境省)による平成22年度ベースの車種別大気汚染物質排出量(NOx、HC、PM)の推計結果は、次の3つのグラフのとおりです。暖機状態からの排出(ホットスタート)の場合、NOx排出量については、排出されるNOxの85.1%をディーゼル車から排出していることとなります。HC排出量については、普通貨物自動車が42.4%、小型貨物自動車が3.6%を占めています。また、PM排出量については、65%がディーゼル普通貨物車からの排出です。
なお、暖機運転をせずに始動(コールドスタート)した場合については、NOx排出量は全体でホットスタート時の10.2%、PM排出量については3%となっています。

車種別大気汚染物質排出量

<図表>燃料別・車種別NOx排出量(t/年、全国)

燃料別・車種別NOx排出量(t/年、全国)

出典:「自動車排出ガス原単位及び総量算定検討調査」環境省環境管理局(H22年度結果報告書より)

<図表>燃料別・車種別HC排出量(t/年、全国)

燃料別・車種別HC排出量(t/年、全国)

出典:「自動車排出ガス原単位及び総量算定検討調査」環境省環境管理局(H22年度結果報告書より)

<図表>燃料別・車種別PM排出量(t/年、全国)

燃料別・車種別PM排出量(t/年、全国)

出典:「自動車排出ガス原単位及び総量算定検討調査」環境省環境管理局(H22年度結果報告書より)


窒素酸化物によって高濃度に汚染された空気は、人の呼吸器に悪い影響を与える恐れがあるといわれているほか、光化学オキシダントや酸性雨の原因物質にもなります。このため大都市における窒素酸化物対策を総合的に推進することを目的として、1992(平成4)年6月に「自動車NOx法」が公布され、車種規制をはじめとする施策を実施してきました。一方、浮遊粒子状物質(SPM)による大気汚染も厳しい状況にあり、とりわけディーゼル車から排出される粒子状物質については、発がん性のおそれを含む国民の健康への悪影響が懸念されています。このため、NOxに対する従来の施策をさらに強化するとともに、自動車交通に起因する粒子状物質の削減を図るため、2001年(平成13年)6月に自動車NOx法が「自動車NOx・PM法」として改正されました。この改正により、NOxに加え、SPMも施策の対象にするとともに、対象地域も従来の首都圏、大阪・兵庫圏の市区町村に愛知・三重圏の地域が追加され、244市区町村が指定されました。(2011年4月時点)


また、自動車の走行速度が低いと、汚染物質の排出量は多くなります。特に、貨物車、バス、特殊車等といった大型の車は排出量が多いという特徴があります。また、急発進・急加速はエンジンに負担がかかるため、NOxが出やすく燃料も多く消費します。

NOxの8車種区分別の車速別排出係数

NOxの8車種区分別の車速別排出係数

出典:「自動車排出ガス原単位及び総量算定検討調査」環境省環境管理局(H22年度結果報告書より)

車種別NOx排出量

NOxの8車種区分別の車速別排出係数(全国平均:平成17算定)

出典:「自動車排出ガス原単位及び総量算定検討調査」環境省環境管理局(H22年度結果報告書より)

このページの先頭へ