大気環境の情報館

ディーゼル排気微粒子除去フィルター(DPF)システムの汎用性向上に関する調査

昭和63年―平成8年に実施した「フィルタートラップによるディーゼル自動車排出ガスの低減化の実用可能性に関する調査」の続編として、平成9年―11年で実施した「ディーゼル排気微粒子除去フィルターシステムの汎用性向上に関する調査」について、調査の概要と、調査研究レポートの全文を紹介。


実験における浄化効果

大都市地域における浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準の達成状況は低いレベルで推移している。この原因の一つにディーゼル自動車から排出される粒子状物質(PM)が挙げられる。ディーゼル自動車のPM低減対策としては、エンジン燃焼改善に加え、ディーゼル排気微粒子除去フィルタ(DPF)等による排出物質の後処理が有効な方法の一つと考えられている。このような背景から、平成8年度までの調査により路線バス用自動再生DPFシステムが開発され、その実用性が実証された。

その後、更なる大都市地域の大気環境改善のためには、路線バス以外のディーゼル自動車、特にトラックへのDPF装着を進める必要があることから、平成9年度から11年度までの3年間に従来のDPFシステムの技術を向上させ、より汎用性を高めるための調査を行った。対象としたのは、塵芥車を想定した小型・中型トラック(2トン積み、4トン積み)用DPFシステムである。

平成9年度は、当時、小型・中型トラックに装着できるDPFシステムが存在しなかったため、DPF非装着状態の2トン積みトラックのPM、排出ガスおよび黒煙について測定を行い、その結果と国内外のDPF開発に関する情報を基に、種々の車両に適用できる汎用性の高いDPFシステムを設計した。設計に先立って、1)DPFシステム全体、2)再生システム、3)基本型式についての3項目を検討し、将来性の高い汎用性向上型DPFシステムのコンセプトをまとめた。DPFシステム全体は酸化触媒、電気ヒータ、セラミックフィルタの3体で構成した交互再生式とし、再生システムは電気ヒータとした。基本形式は炭化珪素モノリスのフィルタを2本並列に配置し、バイパスは設けないこととした。このコンセプトに基づき、第1次汎用性向上型DPFシステムを設計、試作して性能調査を行った。

平成10年度は、前年度の成果を基に、フィルタ後方に酸化触媒を配置した第2次汎用性向上型DPFシステムの効果を調査し、その性能を確認した。また、自動車メーカが開発した蛇腹状に成形したセラミック繊維フィルタを使用する交互再生式DPFを2トン積みトラックに装着して性能を確認し、自治体の塵芥車1台に装着して実証試験を開始した。

平成11年度は、主に自動車メーカ製交互再生式DPFシステムを装着した車両の実証調査を行うこととした。当該DPFを5自治体の塵芥車(各1台)に装着し、シャシダイナモメータ台上での性能調査自動車メーカ製の交互再生式DPFシステムは高い耐久性・信頼性を有することが示された。また、耐久性・信頼性の向上を目的とした第3次汎用性向上型DPFシステムを試作した。2トン積みディーゼルトラックに装着して性能調査を行い、PM除去性能に優れ、実用化の可能性が高い電気ヒータによる交互再生式DPFシステムが構築できた。

以上、3ヵ年間の調査により、塵芥車を想定した小型・中型ディーゼルトラック用DPFシステムが構築された。今後、その他のディーゼル自動車にDPFシステムを普及拡大するには、装置の低価格化や保守管理体制の整備が重要である。また、装着が容易で多様な運行形態に順応可能で、耐久性・信頼性が優れたDPFシステムを開発する必要がある。


調査研究レポート全文

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