ぜん息は、呼吸をするときの空気の通り道(気道)が狭くなり呼吸が苦しくなる状態(ぜん息発作)をくり返す病気です。ぜん息の人の気道は、慢性的な炎症があるために刺激に対して過敏な状態になります。そうするとちょっとした刺激にも敏感に反応してしまい、ぜん息発作をくり返します。
ぜん息では気道がいろいろな刺激により収縮して狭くなります。そのため、ヒューヒュー、ゼーゼーというぜん鳴が聞こえるようになり、息苦しくなります。
ダニやタバコの煙などの環境因子によって気道粘膜の炎症が起こります。皮膚にたとえると、すりむけて“ヒリヒリ”している状態です。ぜん息の人の気道は、発作がないときでも常に炎症が続いています。そのため発作がないときでも刺激を減らしたり炎症を抑える治療が必要です。
ぜん息の人の気道は、通常であれば反応しないようなちょっとした刺激にも敏感に反応して、収縮しやすくなっています。この気道が敏感になる原因は、気道の炎症が考えられています。気道の炎症が治まれば、刺激にも反応しにくくなり、ぜん息発作は起きにくくなります。
炎症によって気道の組織の一部に障害が起こると身体はその壊れた部分を修復しようとします。傷が軽ければ元に戻りますが、発作をくり返していると、傷は元通りに治らず(リモデリング)、呼吸機能の低下がおこります。
炎症がある気道はとても敏感です。タバコの煙や、ダニなどのアレルゲン(アレルギーの原因物質)、風邪や天候などいろいろなことが刺激になって、ぜん息発作が起こってしまいます。発作を起こす原因を知って適切な対策をしましょう。
タバコや花火の煙などのような、環境中の刺激物質によってぜん息発作が起こることがあります。これらはアレルゲンではありませんが、炎症が起きて敏感になっている気道を刺激することで発作の原因になります。
アレルゲンもぜん息発作の原因になります。人によってアレルゲンになる物質は異なりますが、頻度が高いのはダニやハウスダスト、ペットの毛やフケ、カビ、花粉などです。特にダニは日本の住環境で増殖しやすく、多くのぜん息患者さんのアレルゲンになっています。適切な対策や生活の工夫をしてこれらのアレルゲンにさらされる機会を減らしましょう。
子どものぜん息のきっかけとして最も頻度が高いのは風邪であり、その多くがウイルス感染症です。ライノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルスなどが原因として知られています。風邪を完全に防ぐことは難しいですが、可能な範囲で予防をしましょう。
季節の変わり目や台風など気象の変化もぜん息発作の原因になることがあります。冬の冷気だけでなく、気温が急激に変化するような状況では発作が起こりやすいので気をつけましょう。一番の対策は普段からぜん息のコントロールをよくすることですが、発作が起こりやすい時期は、気管支拡張薬を携帯しておくと良いでしょう。
ぜん息治療において、吸入ステロイド薬などの薬を定期的に正しく使用し、気道の炎症を抑えて発作を予防することはとても大切です。しかし薬だけを使っていれば良いということではありません。薬による治療と同時に、身の回りにあるアレルゲンや悪化要因に対処することで発作を予防し、ぜん息をコントロールすることができるようになります。気道の炎症がなくなってくれば、薬の量を減らしたり、最終的にはぜん息の完治につながっていきます。薬だけに頼らず、まずは自分にとってのアレルゲンは何なのか、隠れている悪化要因はないかを正しく知り、それらに合わせた対策を実践していきましょう。
治療の目標は、ぜん息症状がない=発作がない状態(コントロールが良い状態)を維持すること、スポーツや日常生活が普通にできること、呼吸機能などの検査も正常であることです。最終的には、薬がなくてもぜん息のない体になることを目指します。ぜん息コントロールテストを使って、症状がない状態が維持できていることを確かめます。
ぜん息治療の目標を達成するためには、ぜん息についてよく理解した上で、次の3つを実践します。
お子さんの重症度に応じて、これらをうまく組み合わせて、ぜん息を治しましょう。
不適切な治療で症状がコントロールされていないと、運動時に発作を起こしたり、将来的に呼吸機能が低下したり、また突然のぜん息発作で救急受診や入院をすることがあります。さらには発作により死亡することもあります。
ぜん息の治療では、少しの症状もないようにして、ぜん息のない子と同じように、スポーツでも何でも普通にできることを目指します。これを、ぜん息症状が「コントロールされている」と言います。大切なのは、良いコントロール状態を長く維持することです。少し良くなったからと言って、治療の3本柱を忘れて、薬をやめたりすると、また悪くなってしまいます。医師の指示に従って、根気よく治療を続けてください。
日常生活でぜん息の治療目標が達成できているかどうか簡便に評価できるのが、ぜん息コントロールテスト(JPAC)です。チェックシートにより1ヵ月間のぜん息のコントロール状態を点数化し、3段階で判定します。結果について受診の時に医師と相談しましょう。さらに毎月このぜん息コントロールテストを行い結果を記録しておくと、薬の調整やぜん息のコントロール状態の経過を把握するのに役立ちます。
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