WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.48 2016年9月発行

COPD医療トピックス:在宅酸素療法のスムーズな導入・継続のために

酸素を吸いながら生活しやすい環境をつくる

在宅酸素療法にはたくさんのメリットがありますが、「呼吸が楽になっても日常生活に制限があるのでは?」と思う方も多いのではないでしょうか。たとえば家の中の行動を制限する大きな要因は、「酸素流量の調節」と「延長チューブの取り回し」の2つですが、機器の進歩や患者さん自身の工夫によって、ある程度、改善することができます。外出や旅行も以前よりハードルが低くなっています。

便利な機器の活用で生活を快適に

在宅酸素療法では、さまざまな動作に合わせ酸素流量を調節する必要がある方もいます。たくさんの酸素が必要になる入浴時や階段を上るときには流量を上げ、少ない酸素で済む睡眠時には、寝る前に低い流量に調節しておくといったことです。

流量調節のためには、酸素濃縮装置のある部屋にいちいち移動し、直接機器を操作する必要があります。それが面倒なために流量調節をせず、結果的に活動範囲が狭くなってしまうことも珍しくありません。

しかし最近では、リモコンを使って遠く離れた所から酸素流量を調節できる機器も登場していますので、流量調節が面倒という方は、一度医師に相談してみましょう。

また、酸素を吸っている間は、火気厳禁なので、料理ができなくなると心配される方がいますが、今は家電も進歩しています。IH調理器や電子レンジを活用すれば料理も楽しめます。

とはいえ、在宅酸素療法中の患者さんが火気の取り扱いを誤って、火災を起こす事例が後を絶ちません。たばこはもちろんのこと、周囲2m以内は火気厳禁です。とくに高齢者に多いのは、仏壇にお線香を供える際のろうそくやストーブから引火してしまうことです。十分に注意しましょう。

在宅酸素療法 基礎知識②

携帯酸素ボンベを用意しておけば停電でも大丈夫

停電時や災害時などに電気が使えない状態になっても、携帯酸素ボンベを枕元に置いておき、酸素濃縮器からボンベにチューブを切り替えれば、酸素を吸入し続けることができます。

切り替え方については事前にきちんと教えてもらえます。不安な場合は、病院を受診するたびに看護師に教えてもらったり、訪問看護などを利用している場合は、その都度、切り替え方をチェックしてもらいましょう。

最近では、停電してもしばらくはバッテリーで稼働できるタイプの機器もあります。

日本の平均的な停電時間は約15分程度という報告があります。落ち着いて行動してください。


※停電時は酸素ボンベへ付け替える

服装などの工夫で外出時も目立ちません

外出時にチューブやボンベが目立つのではないかと心配される方もいます。

しかし、チューブは洋服の中に入れ込むと外から見えなくなります。カニュラは帽子をかぶることで目立ちにくくなりますし、めがね型のカニュラや光に反射しにくいタイプのカニュラもあります。

また、酸素ボンベといえば、鉄でできた重いボンベを想像される方が多いかもしれませんが、今は、アルミやカーボンを使った軽いボンベが主流です。さらに「呼吸同調器」を取り付けることで、息を吸ったときだけ酸素が供給されるので、小さいボンベでも長時間の酸素をまかなえるようになっています。ボンベを入れるリュックやカート、ショルダーバッグなどの品揃えも充実しています。

人の顔をジロジロと見ながら歩く人はあまりいませんから、深刻に考えずに外出を楽しみましょう。

旅行に関しては、今はほとんどの交通機関が携帯用酸素ボンベの持ち込みを許可しています。ただし、まずは医師に旅行に行くことを相談し、許可をもらいましょう。飛行機を利用する場合、ボンベを持ち込むための診断書などが必要になる場合もあります。また、酸素ボンベの業者に、予備のボンベの依頼をするなど事前準備が大切です。

さらに、不測の事態に備えて行き先、宿泊先を病院や業者に伝えておくこと、自分でも病院、業者の連絡先を携帯していくことを忘れないようにしましょう。

患者さんに学ぶ 延長チューブ 取り回しの工夫

在宅酸素療法を行っている場合、どうしても延長チューブが家中の床を這うことになります。そのため、家の中での移動がしにくい、チューブにつまずいて転倒してしまったなどの声がよく聞かれます。しかし、家の中を整理整頓することに加え、さまざまな工夫によって危険を回避することができます。すでに在宅酸素療法を導入されている患者さんの工夫をみてみましょう。

写真1

天井にカーテンレールを取り付け、チューブをひっかけて移動されている方の例

写真2

階段の手すりにフックを取り付けて移動されている方の例

どちらも、チューブが床を這うことがないので、つまずく心配を減らすことができます。

写真3

部屋のドアが閉まらないという不便を感じている方も多くいらっしゃいますが、家中のドアに穴をあけてチューブを通したり、壁に穴をあけてチューブを通すなどの工夫をされている方もいらっしゃいます

目次

このページの先頭へ