大気環境の情報館

公害健康被害補償法の一部改正(1987年)

1973年の公害健康被害補償制度発足後、大気汚染防止対策が進展し、本制度で汚染の指標とされた二酸化硫黄(SO2)による汚染は著しく改善され、ほとんどの地域で環境基準が達成されました。これに対して、窒素酸化物(NOx)浮遊粒子状物質(SPM)の汚染は、環境基準の達成状況が低い水準のまま、ほぼ横ばいで推移するなど大気汚染の態様に変化がみられるようになりました。

一方、認定患者については、1978年に最後の地域指定がなされてから、概ね、一年間で新規認定9千人、制度離脱6千人、差し引き3千人が純増という状況が続いていました。

こうした状況を踏まえて1983年秋には、中央公害対策審議会において本制度のあり方につき検討が開始されました。

審議会に設けられた専門委員会の報告(1986年4月)では、「現在の大気汚染が総体として(慢性気管支炎、気管支ぜん息等の)慢性閉塞性肺疾患の自然史に何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できないと考える。しかしながら、昭和30~40年代においては、日本の一部地域において慢性閉塞性肺疾患について大気汚染レベルの高い地域の有症率の過剰をもって主として大気汚染による影響と考え得る状況にあった。これに対し、現在の大気汚染の慢性閉塞性肺疾患に対する影響はこれと同様のものとは考えられなかった。」とされました。中央公害対策審議会では、専門委員会報告を受けて、1986年10月、
・それまでの指定地域のすべてを指定解除すること
・既認定患者の補償給付は継続すること
・総合的な環境保健施策を推進すること
等を柱とする答申をまとめました。

公害健康被害補償法は、1987年に改正され、翌1988年3月には大気汚染に係る指定地域(旧第一種地域)はすべて解除されました。

指定地域の解除によって新たに患者の認定は行われないことになりましたが、現在の大気汚染が総体として、慢性閉塞性肺疾患に関して何らかの影響を及ぼしている可能性を否定できないとの判断に立ち、健康被害予防事業の実施、大気汚染の健康影響に関する調査・研究の推進及び環境保健サーベイランス・システムの構築等の大気汚染による健康被害の発生を予防するための施策が強化・推進されることとなりました。

このページの先頭へ