
すこやかライフNo.44 2014年10月発行
ERCAレポート:アレルギー疾患の知識だけでなく実践的なスキルも学ぶ
講師:足立雄一 先生(富山大学 大学院 医学薬学研究部 小児科学講座 教授)
足立先生は最初に、一見、ぜん息の「コントロール状態」が良く見えても、本当の「重症度」は改善していない症例が多いことを強調して説明されました。
ぜん息の症状によって、日常生活にいろいろな障害や影響が及ぶことの度合いをコントロール状態(またはコントロールレベル)といいます。一方、重症度とは、ぜん息の大元の原因である気道の炎症の度合いです。
ここ十数年、薬剤の進歩によって、未治療の患者さんに薬を投与すると、目に見えてコントロール状態が改善する例が多くなったといいます。しかし先生は「短期間の治療では、たとえコントロール状態がよくなっても、ほとんどの場合、重症度は改善していません」と、注意を促しました。そのうえで先生は、気管支が弱い(重症度が改善していない)証拠として、下のような例を挙げられました。
こうした子どもでも、親に聞くと「毎日、元気に学校に行っているし、ご飯もよく食べるから大丈夫」と答えることが多いといいます。しかし、そこで薬をやめてしまうと、重症度は変わっていないことから、再び症状が出てコントロール状態も当然、悪化する……という繰り返しになります。
では、重症度を軽くするには、どうすればいいのでしょうか?
先生は「見た目のコントロール状態に惑わされることなく、粘り強く薬を続けることが大切です」といいます。どのくらいの期間、薬を続ければよいのかについては、「医師とよく相談し、その指示を守ってください」と述べました。
医師は、コントロール状態と、その裏に隠れている本当の重症度の両方を見据えながら、投薬方針を立てます。したがって、コントロール状態が「良好」でも、重症度が改善されていないと判断されれば、薬の量が現状維持となったり、「比較的良好」でも薬を増やしたりする場合(ステップアップ)もあるということです。
重症度(気道の炎症の度合い)を評価する検査としては、スパイロメトリーやピークフローメーターによる呼吸機能検査など(注1)が挙げられます。先生は「単に“コントロール状態が良い”で済ませるのではなく、気道の状態を評価する検査で『本当に大丈夫なんだ』とわかったほうが、より質の高い生活を安心して送ることができます」と述べました。
一方、明らかにコントロール状態が悪い場合は、吸入手技に問題がある可能性を指摘、そのチェックポイントを説明するとともに、室内環境の改善や感染症対策の徹底も訴えました。
(注1) 最近では、気道の炎症の度合いを直接評価する「呼気中NO(一酸化窒素)濃度測定」という新しい検査法が保険適用となりましたが、まだ一般的ではありません。