
すこやかライフNo.46 2015年9月発行
特集:成人ぜん息が増えています 治療と自己管理の見直しを!
成人ぜん息の治療は年々、進歩しています。最近では、2つの薬をひとつにした配合剤や、長期管理と発作治療をひとつでまかなえる薬など、新しい治療薬が続々と発売されています。
―手間が少なく効果を実感しやすい―
現在、よく使われるようになっているのが「吸入ステロイド薬」に気管支を広げる働きのある「長時間作用性β2刺激薬」を加えてひとつにした配合剤です。
これまで、吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬は別々でした。この場合、2種類の薬をそれぞれ吸入する必要があったため、患者さんが混乱してしまったり、面倒になってどちらか一方だけしか使わない、などの問題が起こっていました。
配合剤が発売されたことで、一度の吸入で済ませることができ、より使いやすくなりました。また、吸入ステロイド薬だけではすぐに効果を感じられないため、途中でやめてしまう患者さんも多かったのですが、長時間作用性β2刺激薬が加わることで、呼吸が楽になり、薬の効果を実感できるので、途中でやめてしまうことも少なくなります。
さらに、吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬を一緒にすると、相乗効果が働き、より効果が出やすいといわれています。配合剤の中には、1日1回の吸入で効果が持続するものもあります。
―長期管理薬と発作治療薬を1剤で―
「シムビコート®」という配合剤は、ひとつの薬で長期管理と発作治療に対応できるため、患者さんにとってはわかりやすく、使いやすい薬です。
1日2回の定期的な吸入に加え、発作が起きたときにも、別の発作治療薬を使うのではなく、この薬を吸入します。
そのため、使いすぎが心配されることもあります。医師の指示に従って、正しく使用するようにしましょう。
―治療の選択の幅が広がる―
もともと長時間作用性抗コリン薬は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に用いられる薬でしたが、2014年11月からぜん息にも保険適用となりました。今年5月に発行された「喘息予防・管理ガイドライン2015」では、ぜん息の重症度が中等症から重症の患者さんに、吸入ステロイド薬に追加して使用する治療薬として位置づけられています。
長時間作用性β2刺激薬と同じように、気管支を広げる働きをする薬ですが、その働き方が異なります。いままで、吸入ステロイドと長時間作用性β2刺激薬を正しく使っても、なかなか症状がよくならなかった患者さんへの効果が期待できるなど、治療の選択の幅が広がりました。
仕事の都合で薬を吸入する時間がないなど、なかなか定期的な治療が難しい場合もあります。そんなときには、自分のライフスタイルを医師に伝え、自分にあった薬はどのようなものなのか、相談してみるとよいでしょう。
たとえば、夜しか吸入する時間がないという場合には、1日1回吸入するだけの薬が合っているかもしれませんし、たくさんの吸入器の手技を覚えられないという場合には、配合剤に変えてもらうなどの選択肢があります。
また、薬を使っていても調子が悪いときも遠慮せずに医師に伝えましょう。医師に伝えづらいときには、看護師や薬剤師に相談してもよいでしょう。ぜん息をよりよい状態にするために、患者さんも治療に参加するという意識を持って、臨みましょう。
ぜん息の治療薬は基本的に、薬を気管支や肺まで直接届ける「吸入薬」です。正しい方法で吸入しないと、気管支や肺に薬が届きません。毎日、定期的に薬を吸入しているのに、効果が出ないという方は、もしかしたら正しい吸入ができていないのかもしれません。
医師や看護師、薬剤師に正しく吸入できているのか、定期的にチェックしてもらうことが重要です。また、現在はさまざまな種類の吸入器が販売されています。うまく吸入できないときは、その状況を医師に伝え、自分に合った吸入器に変えてもらう相談をしてみましょう。
どんな吸入器にも共通する大事なポイントです。
吸入前に息を吐き出す
吸入後、3〜5秒息を止める
吸入ステロイド吸入後は、
口の中の副作用予防のため、
必ずうがいをする。
吸入薬は、正しい方法で吸入しないと、気管支や肺に薬が届かず、十分な効果が得られません。そのため、それぞれの吸入器に合わせた正しい吸入方法を習得することが大切です。
吸入器ごとの正しい吸入方法については、こちらの(吸入器ごとの正しい吸入方法)動画コンテンツをご覧ください。