すこやかライフNo.46 2015年9月発行
現場レポート:食物アレルギーのある子どもたちの修学旅行時の食事対応について
手順書は、食物アレルギーのある子どもについて、事前にどんな情報をどのように入手するかも、整理・統一しました。
手順書に記載された事前調査票(図1)では、保護者に対しまず、「現在、医師に食物アレルギーと診断され通院しているかどうか」を尋ねます。この質問は、「本当に食物アレルギー対応が必要な児童・生徒」だけを選び出し、現場の煩雑さを少しでも減らすためのものです。現時点での診断・通院の有無を聞くことで、本当は食べられるのに単なる好き嫌いで除去を求めたり、耐性を獲得し食べられる可能性があるのに、乳幼児の時の診断を根拠に保護者が「食べられない」と、思い込んだりしている場合が除外されます。
除去する食品は、加工食品の表示義務のある特定原材料7品目注1に限定しました。これは、コスト的な制約がある修学旅行の食事では加工食品を使う割合が高いこと、特定原材料には症例が多く症状も重いアレルゲンが指定されていることを踏まえ、「最低限、特定原材料をチェックすれば、誤食のリスクを大幅に減らすことができる」という考え方に基づいています。
また、表示義務がある特定原材料は、受け入れ施設側にとって「責任をもって除去します」と明言できる材料です。一方、それ以外のアレルゲンは、表示義務がない(=表示されていない可能性がある)ことから、調査票では「確認できないことがあります」とはっきり書き、個別に相談に応じることとしています。
アレルゲンではなくメニューの一覧を保護者に示し、除去してほしいものに印を付けさせる方法もよく使われていますが、保護者が食材を正確に確認できず、アレルゲンを見落とすおそれがあります。アレルゲンそのものを指定する手順書の方法ならば、このような見落としも避けられます。
伊藤先生は、「施設側ができること、しなければならないことのベースラインを定めたのが手順書です。その先は各施設の体制に応じて、独自のマニュアルをつくるなどの対応をしてもらうこととしました」と語ります。
手順書では、情報(事前調査票)の流れも明確化しました(図2)。京都府健康福祉部理事の中本晴夫さんによれば、「保護者、学校、旅行会社、受け入れ施設が情報共有し、また、それぞれの役割も明らかにすることで、誤食防止や緊急時の対応を間違いないものにすることを目指しました」といいます。