WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.52 2018年9月発行

小児ぜん息現場レポート:調剤薬局から患者さんと家族を見守る-医療機関と連携した吸入指導の取り組み-

「喘息日記」の情報から吸入再指導を行うことも

山本こどもクリニックでは吸入薬を導入する際、初回の指導は、まず院内で行います。看護師の中村佳代(かよ) さんが、ぜん息や吸入薬の知識を時間をかけて説明し、治療方針に対する保護者の同意を得ます。この時点での保護者の理解と納得は、治療を続けるうえで重要なポイントとなるそうです。

院内での指導後、ハーバル薬局に来店した患者さんは、自分に合ったスペーサーを、実物を試しつつ選び、指導を受けることができます。薬局での実践的な指導は、院内の指導で足りない部分を補い、正しい吸入の習得に大いに役立っているとのことです。

その後の再指導も、薬局が行います。ここで非常に重要な役割を果たしているのが、山本先生がぜん息患者さんに無料で配付している「喘息日記」です(以下・喘息日記参照)。

先生は、保護者に記録してもらったピークフロー値をチェックし、必要に応じて薬局に再指導を依頼しますが、青野さんも、独自に再指導の必要性を判断する材料にしています。「ピークフロー値が下がったり、不安定になったりするのは、すでに軽いぜん息発作の状態。そこで吸入が適切に行われていないことが確認されたら、再指導を行います」と青野さん。

そのほか、痰きり薬の処方が続くとき、ピークフロー測定後にせき込むときなどもぜん息悪化の兆候と判断し、依頼がなくても再指導を行うとのこと。「こうしたサインを見逃さず、再指導につなげること。またその情報を山本先生に伝え共有することが、薬局薬剤師としての大事な役割だと考えます」と青野さんは語ります。

一緒に考え、指導してくれるかかりつけ薬剤師を見つけよう

吸入を正しく続けるポイントとして青野さんは、「1日の生活の中に『治療=吸入の時間』を、意識してつくりだすこと」を挙げます。そのために青野さんは、患者さんと保護者の生活リズムや環境、たとえば兄弟の有無、幼稚園バス送迎時間や通学時間、園や学校の対応状況、どんな部活動をやっているか、保護者は昼勤か夜勤か、保護者をサポートする祖父母が近くに住んでいるかまでを把握したうえで、吸入の時間をどのようにつくりだすか一緒に考え、適切な指導をするよう心がけているそうです。

青野さんはまた、「子どもが正しく吸入を続けられるのは、保護者の努力が大きいと思います。だからこそ私は、その努力を理解し、寄り添うように努めています」とも語ります。

青野さんのように、「どうすれば吸入療法を正しく続けられるか」を、子ども、保護者と一緒に考え、医療機関と連携しながら、指導してくれる薬剤師さんこそ、理想のかかりつけ薬剤師といえるでしょう。患者さんは、薬局を選ぶことができます。みなさんも、理想のかかりつけ薬剤師を見つけ、治療を進めていきましょう。

山本こどもクリニックから

山本先生のメッセージ

写真1院長の山本崇晴先生

長い間、ピークフロー値を記録しグラフを付けていくと、症状悪化の兆候が視覚的・直感的にわかるようになり、長期管理薬の役割や大切さ、ぜん息のメカニズムもより深く理解できるようになってくると思います。

保護者の方には、こうした体験を積み重ねることにより「子どもの一番の主治医」になっていただきたいと思います。

中村さんのメッセージ

写真2看護師の中村佳代さん

長く治療を続けていらっしゃる保護者の方からの質問内容は、時間がたつにつれてレベルアップしてきます。私もそれに応えられるよう、常に勉強しています。読者の皆さんにも、まずは、ピークフロー値の測定・記録を始めてみることをおすすめします。

山本先生が独自につくった「喘息日記」。ピークフロー値や各種検査の結果も記入されます

「喘息日記」の情報から吸入再指導を行うことも
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