すこやかライフNo.45 2015年3月発行
医療トピックス:知っておきたい 食物アレルギーの診断と検査の方法
血液検査は、血液中の原因食物に対する「抗原特異的IgE 抗体」の量を測定する検査です。ただし、血液検査で食物抗原特異的IgE 抗体が検出されても、食べたときに症状が出なければ食物アレルギーとは診断されず、その食物を除去する必要もありません。診断を確定させるためには、3 食物経口負荷試験を行うことが望ましいとされていますが、場合によっては血液検査の結果で確定することもあります。
また皮膚試験は、血液検査でカバーできない食物が原因として疑われる場合や、野菜や果物が原因食物であると考えられる場合に有用です。
原因食物ごとに測定値が0~6にクラス分けして表示され、クラスが高いほどアレルギー症状が起きやすいと考えられます。
検査項目 | クラス | 測定値注1(UA/mL) |
---|---|---|
ランパク | クラス6注2 | 100以上 |
ギュウニュウ | クラス3 | 15.2 |
コムギ | クラス2 | 1.24 |
ダイズ | クラス1 | 0.38 |
コメ | クラス0 | 0.35未満 |
食物の中にはさまざまな種類のタンパク質が含まれています。その中でもとくに、アレルギーの原因(アレルゲン)となりやすい特定のタンパク質を「アレルゲンコンポーネント」と呼びます。
この「アレルゲンコンポーネント」に対する特異的IgE 抗体の値を測定する検査を「アレルゲンコンポーネント検査」といい、最近実用化が進んでいます。
「アレルゲンコンポーネント検査」を行うことで、その食物を食べたときに症状が出るかどうかを予測しやすくなり、より正確な食物アレルギー診断の一助となると考えられています。現在は、卵、小麦、牛乳、ピーナッツに対するアレルゲンコンポーネント検査が保険適用されており、今後のさらなる実用化が期待されています。
(さらに詳しくは基礎用語(PDF:273KB)(すこやかライフ45号別添:PDF) をご覧ください。)
鶏卵には「オボムコイド」と「オボアルブミン」というタンパク質が含まれており、「オボムコイド」は熱に強く「オボアルブミン」は熱に弱いという特徴があります。
現在、「オボムコイド」に対するアレルゲンコンポーネント検査が行われています。鶏卵に対する特異的IgE 抗体が陽性でも、オボムコイドに対する抗体価が陰性だった場合、加熱した鶏卵であれば、食べることができる可能性が高くなります。
最近、インターネットや雑誌・新聞で、食物に対する「抗原特異的IgG 抗体検査(遅延型アレルギー検査)」が食物アレルギーの診断に有用であるという情報が多く見られるようになりました。しかし、IgG 抗体は食物アレルギーのない人にも存在する抗体で、上記の血液検査で行われるIgE 抗体検査とは異なります。抗原特異的IgG 抗体検査で「陽性」の食物をすべて除去すると、食物アレルギーの原因ではない食物まで除去することになり、栄養障害や健康被害を招くおそれもあります。日本小児アレルギー学会は“抗原特異的IgG 抗体検査を食物アレルギーの原因食物の診断法として推奨しない”という見解を述べています。また、抗原特異的IgG 抗体検査は保険適用でない高額な検査です。
食物アレルギーの診断を受ける際は、アレルギーに精通した医師に相談し、正しい診断を受けるようにしてください。