
すこやかライフNo.47 2016年3月発行
医療トピックス:アトピー性皮膚炎 治療とセルフケアの最新動向
皮膚は、私たちの体の外と中を分ける境界線です。正常な皮膚は、一番外側にある角質層がバリアとなって、皮膚の中の水分が必要以上に外に出て行くことを防ぐとともに、外から細菌や刺激物などの異物が進入するのを防止しています。
しかし、アトピー性皮膚炎の人の皮膚は、このバリア機能が低下しているため、水分が外に出て行きやすく、乾燥してカサカサしています。そのため、皮膚に隙間ができやすく、外から細菌や刺激などの異物が進入しやすい状態です。
異物が侵入すると、皮膚の中で免疫に関わる細胞がそれを感知し、炎症を起こす物質を放出します。その結果、湿疹やかゆみを引き起こすことになります。
バリア機能低下の原因として最近注目されているのが「フィラグリン」というタンパク質です。
水分を保って皮膚をしっとりさせる役割は、皮膚の中にある「天然保湿因子」という成分が担っています。 しかし、アトピー性皮膚炎の場合、正常なフィラグリンが少なくなり、天然保湿因子が十分に産生されないことがわかってきました。
また、角質層の細胞と細胞の間にある細胞間脂質(セラミド)をつくる働きも低下しているため、皮膚が水分を保持する力が弱く、乾燥しがちで隙間の多い皮膚になってしまうのです(図1)
角質層がバリアとして働き、水分が皮膚の中に保持され、しっとりしている。外部からの異物の侵入も防ぐ。
バリア機能が低下し、水分が外に出て行きやすい。そのため乾燥し、異物の侵入による炎症が起きている。