
すこやかライフNo.47 2016年3月発行
医療トピックス:アトピー性皮膚炎 治療とセルフケアの最新動向
皮膚の炎症があるとそれにともなってバリア機能がより低下する、という悪循環が起こります。そのため、アトピー性皮膚炎の治療では、
をセットで行う必要があります。
ステロイド外用薬は皮膚の炎症をとるのに有効ですが、適切に使用することが大切です。
ステロイド外用薬を数回使用すれば、見た目もきれいになり、かゆみもおさまってしまうことがあります。しかしこのとき、目に見えない皮膚の中では、まだ炎症がくすぶっていることがあります。ここで薬をやめてしまうと、また炎症がひどくなり、かゆみや湿疹が現れます。そこで再度、薬を使用する…という繰り返しが起こりがちです。(図1-1かゆみや湿疹があるときだけ、ステロイド外用薬を使用していると…)
このような使用方法では、いつまでたってもステロイド外用薬をやめることができず、副作用が現れてしまう恐れもあります。
(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2015の図を改変)
そこで、2015年5月に発刊された「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2015」では、見た目がきれいになり、かゆみがおさまってからも、一定の間隔をおいてしばらくはステロイド外用薬を使用する「プロアクティブ療法」(図1-2プロアクティブ療法)が推奨されています。
皮膚の中の炎症がなくなるまでステロイド外用薬を適切に使い続けることで、最終的にステロイド外用薬をやめることを目標にした治療法です。
ステロイド外用薬をどのくらいの期間、どのくらいの量使用すればよいのか、医師の指示を守り、症状が繰り返すことがなくなるよう、根気よく治療を続けましょう。
(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2015の図を改変)
同時に、スキンケアによってバリア機能を強化します。スキンケアとは、皮膚をしっかりと丁寧に洗って清潔にし、皮膚を乾燥から守るために保湿剤を塗ることです。
アトピー性皮膚炎の症状を悪化させるもっとも大きな要因が、皮膚についた「黄色ブドウ球菌」です。正常な皮膚では、汗の中に含まれる「抗菌ペプチド」という成分が、皮膚についた黄色ブドウ球菌を殺菌してくれます。
しかし、皮膚に炎症があると抗菌ペプチドの産生力が低下してしまいます。そのため、アトピー性皮膚炎の人の皮膚には黄色ブドウ球菌がつきやすく、さらに炎症を悪化させ、湿疹やかゆみがさらにひどくなる原因となります。そこで、体を泡で丁寧に洗って黄色ブドウ球菌を落とすことが必要です。
体を清潔にした後、皮膚の水分を補う目的で、保湿剤を塗ります。アトピー性皮膚炎の人の皮膚はもともとバリア機能が低下しやすく乾燥しがちであるため、プロアクティブ療法を行ってステロイド外用薬をやめることができても、保湿剤をやめることはできません。しかし、年齢とともに皮脂の分泌が増加して乾燥が改善されたり、治療を継続したことで、自然治癒力が増してバリア機能が強化され、保湿剤を使わなくても済むようになることもあります。
詳しい体の洗い方、薬や保湿剤の塗り方については、すこやかライフ43号「医療トピックス」を参照ください。