
すこやかライフNo.47 2016年3月発行
現場レポート:ぜん息児へのPM2.5の影響と予防策を知ろう
日本では、工場や自動車の排出ガス規制が進み、PM2.5の濃度は全般的に下がってきています。今、主に問題となっているのは、中国大陸から飛来するPM2.5による越境汚染です。
ただ足立先生は「越境汚染による季節変動も含め、日本で観測されるPM2.5の濃度では、重大な健康被害が起こることは、あまりないでしょう。国内でPM2.5に関して気をつけるべきなのは、たばこの煙です」と語ります。
たばこの煙に含まれる粒子は典型的なPM2.5であり、屋内や車内で喫煙すると、中国・北京の最悪汚染時に匹敵する濃度になるともあるのです(資料2たばこの煙による屋内でのPM2.5濃度)。しかもたばこの煙には、多くの発がん物質が含まれています。
このようにPM2.5は、大気汚染対策だけではなく、屋内の対策も必要になります。屋内では、受動喫煙のない環境づくり、つまり禁煙が健康被害を防ぐうえでもっとも重要です。たばこはさまざまな健康被害をもたらすので、PM2.5の観点から見ても、禁煙することが家族、そして自分自身の健康につながることをまず、覚えておいてください。
アメリカ環境保護庁では、屋外大気の質を「良好」から「緊急事態」まで6つに分類しています。日本禁煙学会では、この分類と、国内外の複数の研究から得られたさまざまな状況での屋内のPM2.5の濃度を比較したデータ(下図PM2.5濃度及びアメリカの指針に基づく大気の質の危険度をまとめた表)を公表し、「自由喫煙の居酒屋などは、北京の最悪汚染時に匹敵するPM2.5レベルとなっています」とコメントしています。
状態 | PM2.5濃度(㎍/㎥(マイクログラム毎立方メートル)) | 大気の質の危険度 |
---|---|---|
完全禁煙 コーヒー店 | 濃度8 | 良好 |
WHO屋外基準上限 | 濃度15 | 良好 |
非喫煙家庭 | 濃度17.8 | 許容範囲内 |
日本屋外(郊外)平均 | 濃度20 | 許容範囲内 |
完全分煙 ファストフード禁煙席 | 濃度32 | 許容範囲内 |
喫煙家庭 | 濃度46.5 | 弱者に危険 |
自由喫煙 パチンコ店 | 濃度148 | 大いに危険 |
完全分煙 ファストフード喫煙席 | 濃度256 | 緊急事態 |
不完全分煙 居酒屋禁煙席 | 濃度336 | 緊急事態 |
不完全分煙 居酒屋喫煙席 | 濃度496 | 緊急事態 |
自由喫煙 居酒屋 | 濃度568 | 緊急事態 |
タクシー喫煙者1人 | 濃度1,000以上 | 緊急事態 |
今回の資料には危険というレベルの例はありません。
出典:日本禁煙学会「受動喫煙ファクトシート2 敷地内完全禁煙が必要な理由」