WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.48 2016年9月発行

小児ぜん息 その他アレルギー現場レポート:熊本地震の教訓から学ぶアレルギー児の災害対策

熊本の教訓から読者の方々へ

災害時の自助のポイントについて、熊本医療センター小児科の緒方美佳先生を主治医とするアレルギー児の保護者や行政担当者の方にうかがったお話を元に、「教訓」としてまとめました。

写真1 お話をうかがったアレルギー児の
保護者のみなさん。

自助のポイント

―どんなものを備蓄すればいいの?―

(注)備蓄品のリストは、「基礎用語」(PDF:384KB)にまとめてありますので、そちらもご参照ください。

食物アレルギー

最低限用意しておきたい食品と調理器具(米アレルギーがない場合)

  • 無洗米・アルファ化米・米粉で作った麺類
  • 塩・アレルギー対応のふりかけ
  • 卓上コンロと鍋
参考情報
  • 無洗米がよい。米を研いでいたら2ℓのペットボトルがあっても足りない。
  • 子どもが飽きてきたら、ふりかけをまぶしておにぎりにしてもOK。
  • 鍋でご飯を炊く方法を覚えておきましょう。
  • アルファ化米に野菜ジュースを入れるだけで、チキンライス(の味)になる!
  • 「カップ麺を食べている他の子どもたちを見て、麺を食べたいといわれた。ライスヌードルが配給され助かった」 との声も。

使い捨て用品は重宝する

  • 紙コップ、紙皿、割り箸、使い捨てのスプーン/ラップ
参考情報
  • 洗い物ができない、できても不完全なので、衛生面で心配がある。またアレルゲンが残っている可能性もあるため、使い捨て用品は重宝する。
  • アレルギー対応の支援物資では、レトルトのカレーやシチューが多い。スプーンもあると便利。
  • ラップを紙コップ、紙皿に敷き、その都度捨てれば、さらに節約になる。ラップは、おにぎりを握るときにも使える。

保存食は「回転備蓄」で

  • レトルト食品や缶詰など
参考情報
  • 食品表示だけでなく、実際に食べられるかどうか、普段から確認しておく。
  • 賞味期限が意外と短いので注意。期限が来たら食べて補充する「回転備蓄」を。たとえば毎月「防災の日」を決め、家族で食べて入れ替える。
  • アレルギー対応の保存食は意外と種類が豊富。普段から店頭やネットなどで調べておきましょう。子どもが飽きないように、おやつも用意しておくとよいでしょう。

アトピー性皮膚炎

スキンケア用の水・水を沸かす手段・ベビーバスを用意しておく

  • 蛇口の付いたタンクで水を「流す」
  • 卓上コンロ、電気ポット
  • ベビーバスは空気で膨らませるタイプを用意
参考情報
  • スキンケアには、蛇口付きのタンクがよい。
    たとえわずかの水量でも、水を「流し」ながら洗うことは、単に「拭く」よりも気持ちが良い。じゃばら式ならば、しまっておくにも邪魔にならない。
  • 黒いビニール袋を水を入れたペットボトルに巻き、日なたに置いて温水をつくった人もいる。
  • ガス、水道に比べ電気の復旧は早いため、電気ポットもあれば、なおよいでしょう。
  • ベビーバスは空気で膨らませるタイプのものなら、携帯・収納も楽。なければ衣装ケースでも代用できる。
  • 大きなビニール袋を、ベビーバスの内側に張り使い捨てにすれば、洗う必要もない。

ぜん息

吸入器・ネブライザー・ピークフローメータ

  • 紛失・破損を避ける工夫を
参考情報
  • 毎日使う物品は、取り出しやすい場所に置いているために、地震の揺れで紛失したり、壊れたりする。
    ひとまとめにして、ファスナー付きの丈夫な入れ物に入れておく、予備を非常持ち出し袋に入れておくといった対策が必要。

飲用に、調理に、スキンケアに、何より水が大事!

入手しやすいのは避難所

飲用、調理、スキンケアに、生活の基本となる水は、自衛隊や他の自治体の給水車が来る避難所にいたほうが、入手は容易。

ただ、避難所によっては、1人当たり500㎖入りペットボトル1本だけということもあるので注意。

水タンクの用意を

給水袋は必要以上に水が出やすく使いにくい。水をためるタンクは絶対に必要。ポリタンクなどは店が開いてもすぐ品切れになったので、必ず事前に用意しておくこと。

プラスチック臭が気になることもあるため、使う前に何回か水を出し入れし、天日で乾かすなどの工夫を。

避難所生活の知恵

炊き出しで――

「加工食品の袋を並べてもらうだけ」なら頼みやすいかも
熊本市内のある避難所では、炊き出しに使った加工食品の袋を並べておき、保護者に判断してもらうという方法をとった。原材料を書き出すのに比べ大幅に少ない手間なので、調理担当者や避難所管理者にも頼みやすいかもしれない。
基本的には食べないほうが安全という意見も
何が入っているかわからないので、基本的に食べられない。おにぎりは中身が大丈夫でも、誰が握ったかがわからない(調理担当者は手を消毒しビニール手袋伝をして握るが、急遽手伝いに入った人が素手で握っていたケースもあった)。

子どもにお菓子をくれる人がいたら――

コミュニケーション能力を発揮し「善意」を断る
避難所では、お菓子やアイスクリームを子どもにくれる善意の人もいる。まずお母さんがひと口食べてみて、「おいしいね。●●ちゃんには後であげるね」と、いったんもらってしまう、といった対応ならば角は立たない。
避難所の全員に、子どもが食物アレルギーであることを告げたお母さんもいた。その場合、一方的にしゃべるのではなく、相手の話もよく聞いてあげる姿勢が大事。すると「うちの孫も、実は食物アレルギーで…」と理解を示してくれることもある。こうしたときは、アレルギーであることを表示したサインプレートやビブスも説明の補助として役立つ。

目次

このページの先頭へ