WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.49 2017年3月発行

COPD医療トピックス:COPD(慢性閉塞性肺疾患)の栄養療法

やせるだけでなく筋肉量が減ることも問題

体重が減るとCOPDが増悪しやすくなる(急激に悪くなる)ことや、入院のリスクが高まる、生命予後が悪い(余命が短くなる)という報告があります(右図)。

また、栄養障害によって脂肪が減るだけでなく、筋肉量が減少することも大きな問題です。近年、筋肉量が減少することで身体機能が低下する「サルコペニア」注1という状態が注目を集めています。サルコペニアになることで、日常生活の動作が制限され、転倒骨折や寝たきりにもつながります。

注1
サルコペニアについて詳しくは、「基礎用語(PDF:1.68MB)」をご覧ください。

COPD患者の標準体重比と生存率

図 COPD患者の標準体重比と生存率を表したグラフ。標準体重が90%未満のCOPD患者は、3年後の生存率が約0.65%で、そうでない人に比べると生存率が30%以上低下している。

海外では、やせている人(標準体重の90%未満)は、そうでない人に比べ、3年後の生存率が30%以上低下すると報告されています。

Wilson, DO, et al. Am Rev Respir, Dis, 139:1435-1438, 1989より改変

COPDの人は、息切れにより活動が制限されることが多々あります。これに、摂取エネルギー量の減少による呼吸筋や下肢の筋肉量の減少(サルコペニアの状態)が加わると、さらに動くことが困難になります。動かないので食欲が低下する。さらに動かなくなる……、という悪循環に陥るおそれがあるのです(下図)。そのため、COPDの病状が軽いうちから十分な栄養を摂って体重を維持し、同時に運動することで筋肉の衰えを防ぐことが重要です。

病状を安定させ進行を抑えて、活動的な生活を送れるようにするためにも、栄養バランスに注意しながら摂取エネルギー量を増加させ、筋肉の減少を防いでいきましょう。

栄養不足による悪循環

図 栄養不足による悪循環。食欲低下、摂取エネルギー不足・呼吸筋や下肢の筋肉などの筋肉量が低下(サルコペニア)・息切れ、呼吸困難の増大・活動量の低下、が繰り返されている。


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