
すこやかライフNo.49 2017年3月発行
医療トピックス:COPD(慢性閉塞性肺疾患)の栄養療法
COPDの人にとくに摂っていただきたい栄養素は、少量でも高エネルギーを摂取できる脂質です。脂質は、体の中で燃焼したときに発生する二酸化炭素の量が、タンパク質や炭水化物に比べて少ないため、呼吸への負担も少なくなるという特徴もあります。
しかし、脂質を中心に毎食250kcalをプラスするといっても、食欲がない、呼吸が苦しくてたくさん食べられない、という人もいらっしゃるでしょう。そこで、油を使用した料理を取り入れたり、調味料や食材の選択を工夫することでできる、家庭でのエネルギー摂取量アップのポイントをご紹介します。
食パンにバター、ジャム、ピーナッツクリームなどをぬる。チーズをのせる
ふかしたじゃがいもにバターやマーガリンをぬる
みそ汁に豆腐や卵を加える
そうめんにごま油をまぶす(めん類は短く切るとすする必要がないので食べやすくなります)
そばやうどんに卵を落とす、天かす、かまぼこ、天ぷらなどをのせる
基本は、朝、昼、夕食と1日に3食きちんと食べることが大切ですが、1回にたくさん食べることができないという人は、1回の食事量を少なくして、回数を増やしてみるとよいでしょう。
また、間食でエネルギー量を補うこともできます。食べられれば、エネルギー量が高いケーキなどの洋菓子やアイスクリーム、チーズなどがおすすめです。また、チョコレートやナッツ類などを冷蔵庫に入れておくのではなく、手の届くところに置いておき、少しずつつまめるようにするのもポイントです。
呼吸が苦しく、食べることが負担である場合には、市販の栄養補助食品を利用する方法もあります。栄養補助食品には栄養素がバランスよく配合されており、少量でも高エネルギーを摂取することができます。飲むタイプやゼリータイプなどさまざまな形状があり味も豊富です。病院の売店や通信販売、インターネットで購入することができますので、必要な人は、かかりつけの医師や管理栄養士に相談してみましょう。
最近、「中鎖脂肪酸」が注目されています。中鎖脂肪酸とは、ココナッツなどヤシ科植物に含まれる天然成分です。一般的な油脂類(オリーブオイルやキャノーラ油など)よりも消化吸収がよく、体脂肪として蓄積されずに短時間でエネルギーになりやすいという特徴があります。「ココナッツオイル」や「MCTオイル」といった名称で市販されており、オイルタイプだけでなく粉状になったものもあります。これらを料理や飲み物に加えるだけで、エネルギー量を効率よくアップさせることができます。
胃にガスがたまりやすい炭酸飲料やビールは、控えましょう。お腹がふくれて食欲が低下したり、横隔膜の動きをじゃまして呼吸がしにくくなります。