
すこやかライフNo.50 2017年10月発行
現場レポート:「ノルディック・ウォーキングを活用した呼吸リハビリテーション COPD患者さんの身体活動性を改善」
ノルディック・ウォーキングは、なぜ呼吸リハビリに良いのでしょうか。
まず、歩くときに背筋が伸び、呼吸が楽になることが挙げられます(図1)。高齢になり足腰が弱ってくると、どなたでも前かがみの姿勢になりがちですが、この姿勢は肺を圧迫し息苦しさをもたらします。ノルディック・ウォーキングならば2本のポールを持つことで背筋が伸び、歩く際の呼吸が楽になります。また、ノルディック・ウォーキングは通常歩行や杖で歩く場合に比べ安定感が増すため転ぶ不安が解消され、外出する機会も自然と増えます。
COPDをはじめとする呼吸器疾患の患者さんは、息苦しさや転倒への不安などを理由に体を動かすことを避け、そのことでさらに症状が悪化し動けなくなっていくという悪循環に陥りがちです。
その点で、ノルディック・ウォーキングはCOPD患者さんにとって、効果的なリハビリ法と言えるでしょう。そのほか通常歩行に比べ、上半身の筋肉も使う、運動効果が高い、膝・腰への負担が少ないというメリットもあります。
ちなみにノルディック・ウォーキングは、ポールを体の前に突くか、後ろに突くかによって、安定感や運動効果が異なってきます(図2)。COPD患者さんは、一般的に安定感を優先し、前に突く方法から始めるのが良いでしょう。また辻先生によれば、COPD患者さんは軽症から中等症の患者さんはもとより、かなり重症の場合でも、ノルディック・ウォーキングを続けると持続力や筋力がついてきて、体の後ろにポールを突けるようになってくるそうです。
「ポールを突く位置は、その時の自分が一番やりやすい位置に、自然と決まるものです。無理をしないで自然体でノルディック・ウォーキングを楽しんでください」というのが辻先生のアドバイスです。
図1 呼吸器疾患のある方にとっての、ノルディック・ウォーキングのメリットを示した図です。高齢者は前かがみの姿勢となりがちですが、この姿勢は肺を圧迫し呼吸を苦しくします。2本のポールで支えると背筋が伸び、肺も圧迫されず、呼吸が楽になります。歩くときの安定感も増して、転倒への不安もなくなります。
またポールの長さは、グリップに手を乗せた上体で、肘がほぼ直角になる高さに調整します。
図2 ノルディック・ウォーキングでポールを突く位置について説明した図です。
体の前に突くと、安定感は増しますが、運動効果は低くなります。体の後ろに突くほど、安定感はなくなるかわりに、運動効果は高くなっていきます。
呼吸器、運動器に不安のある人は、前に突くと安全です。慣れてきたら、突く位置を徐々に後ろにしていき、自分の一番やりやすい位置に突いてみます。
普段から呼吸困難を感じる人は、自分に合ったリズムで歩くこと、口すぼめ呼吸を身に付けることが大事です。たとえば、2歩歩く間に鼻から息を吸って、次の4歩で口すぼめ呼吸により息を吐き出すといった感じです。