WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.50 2017年10月発行

COPD現場レポート:「ノルディック・ウォーキングを活用した呼吸リハビリテーション COPD患者さんの身体活動性を改善」

楽しいから続けられるノルディック・ウォーキング

とはいえ、「動くと苦しい・動かなければ苦しくない」COPD患者さんにとって、身体活動性を高めることは容易ではありません。歩行訓練にしても、その効果は承知しつつも続けられる方は多くはないと言われています。

ではなぜノルディック・ウォーキングは、身体活動性を高められるのでしょう。

この問いに辻先生は、「ノルディック・ウォーキングは、誰でも楽しく続けられる運動だからです」と答えます。さらにノルディック・ウォーキングを通して、さまざまな世代の人が交流し、地域づくりへとつながる可能性も強調します。

実際、辻先生は、地元の吹田市などで、地域づくりを視野に入れたノルディック・ウォーキングによる健康づくり事業に関わっています。また、こうした事業は、全国の自治体に広がる気配を見せています。

辻 文生先生インタビュー

「ノルディック・ウォーキングそのものが持つ楽しさ」と「仲間と一緒にする楽しさ」が、継続につながる

ノルディック・ウォーキングはなぜ、長い期間、続けられるのでしょうか。

辻 文生先生一言で言えば楽しいからです。その楽しさは2つあって、まず一つは、ノルディック・ウォーキングそのものの楽しさです。

腕の振りがダイレクトにポールの突き(推進力)につながる感じが、非常に楽しい。通常歩行や速歩でも腕の振りは推進力となりますが、長時間、振り続けると飽きてしまいます。普通の人が速歩をしたら20分も続かないでしょう。でも、ノルディック・ウォーキングなら楽しくて飽きないので1時間くらいは平気で続けられるはずです。歩き終わった後も、通常歩行や速歩では感じられない「上半身の筋肉を十分に使った感じ」が、爽快ですよ。

もう一つの楽しみは?

これが大事なのですが、「仲間と一緒にすることの楽しみ」ですね。私としては、ぜひ仲間をつくってノルディック・ウォーキングを楽しんでほしいと思っています。

歩いている時って、いろいろ話をしますよね。そこで豊かなコミュニケーションが生まれます。自然の中を歩き、五感すべてで感じ取る幸福感や充実感も、みんなで共有することで、より深い絆につながっていくでしょう。仲間と、ノルディック・ウォーキングの後においしい物を食べに行ったり、旅行先でノルディック・ウォーキングを楽しんだりするのも、お勧めです。

そういう「仲間づくり」に、ノルディック・ウォーキングは最適というわけですね。

ノルディック・ウォーキングは、体力や健康度に応じて、誰でも自分なりの方法でできるスポーツです。(背筋が伸びて歩くときの呼吸が楽になるのページを参照)。だから高齢者と若者が一緒にできる。同世代でも、さまざまな健康度の人が一緒にできるわけです。

体が動かないから外出を控える。その結果、心身ともに衰え社会的孤立が深まっていく。これはCOPD患者さんに限らず、高齢者全体に共通する問題です。

そういう視点に立つとノルディック・ウォーキングは、COPD患者さんのリハビリにとどまらず、超高齢社会において、世代間の交流や地域づくりに大きな役割を果たすと期待しているんです。


吹田市の万博記念公園でノルディック・ウォーキングを楽しむ市民の方々。同公園には、8㎞・5㎞・3㎞のノルディック・ウォーキングコースが設定されている

楽しいから続けられるノルディック・ウォーキング
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