大気環境の情報館

移動発生源対策(自動車排出ガス規制など)

大気汚染物質の発生源には、自動車、船舶、航空機などの移動発生源があります。
特に近年大都市においては、自動車から排出される窒素酸化物(NOx)浮遊粒子状物質(SPM)による大気汚染が著しくなり、その対策が求められてきました。

このような自動車排出ガスに対する対策として、自動車排出ガス規制低公害車等の普及促進、自動車の効率的な利用や公共交通への利用転換などによる交通需要マネジメント(TDM)、交差点等の局地汚染対策等が進められています。

自動車排出ガス規制

自動車排出ガス規制は、大気汚染防止法により、自動車1台ごとの排出ガス量の許容限度が定められ、道路運送車両法に基づく道路運送車両の保安基準により確保されるという仕組みで行なわれています。

なお、道路運送車両法では、同法に基づく自動車検査の結果、保安基準に適合すると認められた自動車の使用者に対し自動車検査証が交付され、当該自動車を運行の用に供することができることになります。

自動車排出ガス規制の強化については、平成8年5月に環境大臣から中央環境審議会に対して諮問した「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」より、中央環境審議会では継続的に審議が続けられてきており、個別の課題に結論が得られ次第順次答弁がなされてきています。

<図表>中央環境審議会での審議状況
平成23年版環境・循環型社会・生物多様性白書

年月 記事
平成
8.5
【中環審諮問】
今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について
8.1 【中環審中間答申】
◯ガソリントラック及びバスについて平成10年から規制を強化
◯二輪車の規制導入(平成10,11年)
9.11 【中環審第二次答申】
◯ガソリン自動車の全車種について二段階で規制を強化
(1)新短期目標(平成12,13,14年規制
(乗用車12年規制=ポスト53規制)
(2)新長期目標(平成17年頃を目途)
◯ディーゼル特殊自動車(建設機械、産業機械、農業機械)の排出ガス規制を平成16年まで導入
10.12 【中環審第三次答申】
◯ガソリン自動車の全車種について二段階で規制を強化
(1)新短期目標(平成14、15,16年規制
…NOxで25~30%、PMで28~35%低減
(2)新長期目標(平成19年頃を目途)
12.11 【中環審第四次答申】
ディーゼル自動車の新長期目標の早期達成(平成17年頃を目途)
軽油の低硫黄化(500ppm→50ppm)を平成16年末までに実施
◯特殊自動車規制の早期達成(平成15年)
14.4 【中環審第五次答申】
◯ガソリン自動車の新長期目標値(平成17年、19年(軽貨物車)規制)の設定
…乗用車でNOx、HC約50%低減
◯ガソリンの低硫黄化(100ppm→50ppm)を答申
◯ディーゼル自動車の新長期目標値(平成17年規制)の設定
…重量車でNOx約40%、PM約85%低減
◯試験モードの変更(重量車2005年、乗用車等2008?2011年)
15.6 【中環審第六次答申】
◯二輪車の規制強化(平成18年、19年)
◯ディーゼル特殊自動車の規制強化(平成18年?20年規制)
◯ガソリン特殊自動車の排出ガス規制を平成19年までに導入
15.7 【中環審第七次答申】
新長期規制以降のディーゼル自動車の排出ガス規制強化を検討
◯燃料品質にかかわる強制規格項目の充実
◯軽油の低硫黄化(50ppm→10ppm)を平成19年までに実施
17.4 【中環審第八次答申】
◯ディーゼル自動車の09年目標値(平成21年)
◯ディーゼル重量車の「挑戦目標値」提示
◯ガソリン自動車(リーンバーン直噴車)のPM規制導入(平成21年)
20.1 【中環審第九次答申】
◯ディーゼル特殊自動車の規制強化(平成23年?27年)
オパシメータの導入等
22.7 【中環審第十次答申】
○ディーゼル重量車の排出ガス低減対策
○E10ガソリン車の排出ガス低減対策及びE10の燃料規格

※中環審:中央環境審議会、NOx:窒素酸化物、PM:粒子状物質

<図表>自動車排出ガス規制強化の経緯
平成23年版環境・循環型社会・生物多様性白書

ガソリン・LPG乗用車規制強化の推移(NOx) ガソリン・LPG乗用車規制強化の推移(HC) ディーゼル重量車(車両総重量3.5t超)規制強化の推移(NOx) ディーゼル重量車(車両総重量3.5t超)規制強化の推移(PM) 軽油中の硫黄分規制強化の推移(ppm)

自動車排出ガス対策技術

自動車排出ガス規制に対応するため、エンジンから発生する大気汚染物質の低減対策として以下のようなものが進められています。

  • 燃料の噴射時期の改善等により燃焼が良好に行なわれるようにすること。
  • 触媒の使用による汚染物質の酸化・還元。
  • 排出ガス再循環(EGR)装置により不活性な排出ガスを吸気系統へ導入し、最高燃焼温度を低下させることによるNOxの発生抑制。
  • DPF(ディーゼル排気微粒子除去フィルター)システムによる粒子状物質の除去。 等

排出ガス規制適合ディーゼルエンジンの例

排出ガス規制適合ディーゼルエンジンの例

ディーゼル車用複合脱硝システム、DPFシステムについての詳細は「環境再生保全機構が行っている調査研究」コーナーへ

自動車燃料品質に関する許容限度

大気汚染防止法に基づく「自動車の燃料の性状に関する許容限度及び自動車の燃料に含まれる物質の量の許容限度」が以下のように定められています。

自動車燃料品質に関する許容限度

自動車燃料の種類 燃料の性状または燃料に含まれる物質 許容限度
ガソリン
硫黄
ベンゼン
MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)
酸素分
検出されないこと
0.001質量%以下
1体積%以下
7体積%以下
1.3質量%以下
軽油 硫黄
セタン指数
90%留出温度
0.001質量%以下
45以上
摂氏360度以下

出典:「環境白書」(環境省)

  1. 注1)「MTBE」:ハイオクガソリンの添加剤として使用されているエーテルの一種である。ハイオクガソリンとは、ノッキング(エンジンの圧縮行程において、予定された通りに爆発が起こらない異常燃焼のひとつ)が起こりにくいガソリンをいう。
  2. 注2)「セタン指数」:軽油の着火性を示す指数。
  3. 注3)「90%留出温度」:熱を加え、90%の量が留出(蒸発)するときの温度。これが低いものほど、優れた加速性が示される。
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